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まだまだ多いポイ捨てペットボトルをどう減らす

大阪商業大学准教授 NPO法人プロジェクト保津川代表理事原田禎夫

「清らかな保津川の流れを 次の世代へ」が私たちのミッション

京都を代表する観光地,嵐山。その嵐山を流れるのが保津川です。この川は面白いことに,流域ごとに様々に呼び名が変わります。京都市内の人にとっては桂川,あるいは大堰川と言った方がなじみ深いかもしれませんね。保津川下りや嵯峨野トロッコ列車など,保津峡の峡谷美は世界中から訪れる多くの人の目を楽しませています。そんな保津川の環境を守ろう,と2007年に設立されたのがNPО法人プロジェクト保津川です。

(図1)
(図1)

100回を迎える保津川クリーン作戦

プロジェクト保津川の活動の原点でもあり中心となっている活動が,上流の亀岡市内を中心に毎月実施している「保津川クリーン作戦」です。来年(2017年)2月には100回目を迎えるこの保津川クリーン作戦は,毎年約1,000人もの方にご参加いただき,多い年では大型ダンプ1台分以上(1万リットル)のごみを回収しています。

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(図2)

保津川のごみで圧倒的に多いプラスチック類,ペットボトル

保津川のごみの中でも圧倒的に多いのが,ペットボトルや食品トレイ,包装フィルムなどのプラスチック類です。こうした傾向は,何も保津川に限った話ではなく,実は日本中の河川に共通する問題でもあります。NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムの調査によると川でのペットボトルの回収量は500ccペットボトル入り飲料の販売が解禁となった1990年代半ばより急増しています。同じことは,保津川下りの船頭さんたちもおっしゃっています。

(図3)
(図3)

ペットボトルを減らすために経済的な仕組みを

では,どうすればこのペットボトルを減らせるのでしょう?日本以外の先進諸国はどこでも,飲んだ後にペットボトルを返却すると容器代が返ってくるデポジット制度(預託金制度)を導入しています。私が京都府北部の舞鶴市沿岸で実施している調査でも,海岸に流れ着いたペットボトルのほとんどは日本製の500ccサイズのものです。中国や韓国のものも見つかりますが,30年ほど前にデポジット制度を導入した台湾製のものは今夏の調査でも1本も見つかりませんでした。ポイ捨てをやめよう!と呼びかけることももちろん大切ですが,ポイ捨てをしないことでトクをする,そんな経済的な仕組みを導入することが効果的なのはいうまでもありません。

「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」にエール

今,世界中の海でプラスチックごみが大きな問題となっています。今年のG7伊勢志摩サミットでも緊急に取り組むべき課題として挙げられた海の「プラスチック汚染」。でもその多くのプラスチックごみは実は陸から川を通じて流れ出したものであることはまだまだ知られていません。「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」が,海や川のペットボトルごみを減らす一歩となることを願っています。(2016年10月24日公開)

参考文献

特定非営利活動法人荒川クリーンエイド・フォーラム(2014)『特定非営利活動法人荒川クリーンエイド・フォーラム報告書2013』.
原田禎夫(2015)河川のごみ問題からみる容器包装リサイクル制度の課題,環境経済・政策研究,第8巻1号,pp.22-25.

以上

NPO法人 ブロジェクト保津川 http://hozugawa.org/

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