人づくりだ

リーフ茶サイトをベースにした大学生向け環境教育プログラムの実践報告

京都市ごみ減量推進会議職員堀 孝弘

リーフ茶サイトをベースに大学生向け環境教育プログラムを作成

京都市ごみ減量推進会議(ごみ減)は,「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」を実施しています。その一環として、ウェブサイト(http://kyoto-leaftea.net,以下,リーフ茶サイト)の掲載情報をもとに環境教育プログラムを作成しました。
対象は大学生。幼児や小学生を対象とした環境教育プログラムは多く見かけます。ですが,大学生向けとなると多くは見かけません。すでに複数の大学教員さんからゲスト講師として招いていただき,実施しています。以下内容の紹介と受講した学生たちの反応について報告します。
(※リーフ茶とは、茶葉から淹れた茶のことです。)

実施したプログラムの概要

実施日は,2016年11月24日と12月21日。京都市内の大学の政策学部1回生。たまたま同じ大学の同じ学部でしたが,それぞれ別教員が担当する授業で,学生の重複はありません。受講者は前者が13名。後者は14名。特に環境問題について深く研究しているといった学生ではありません。
いずれも90分の一講時の中で行い,ごみ減からスタッフが出向き,60分程度を講義にあて,質疑とアンケートに20~25分程度の時間を取りました。
目的としては,「リーフ茶の良さ」や「ペットボトルリサイクルの問題を知ること」にとどまらず,「ペットボトル緑茶の普及」を取り上げ,企業による需要創造の働きかけに対して,消費者自身が,自ら必要なものを見極め,選択することの大切さについて考えることも,目的の1つとしました。

開始前に記載してもらったアンケート

授業の開始前に,学生たちに「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」という名称を聞き,どのような印象を受けるか尋ねました。生まれた時からペットボトル飲料が当り前にあり,ペットボトル緑茶も当り前のものとして利用してきたはずです。それを「減らそう!」ということにどのような反応を抱くか率直な感想を尋ねました。

授業開始前に配布したアンケートの上の方に「インジケーター」を記載し,現在の「気持ちとして,このあたりというところ」に〇を書き込んでもらいました。学生用の「インジケーター」には記していませんが,中間の「特に何も感じない」であればゼロ。「疑問や反感の方が大きい」はマイナス10。「共感した。関心をもった」はプラス10として,学生が〇を付けた位置で数値化し,すべての授業を聞き終えた後,あらためてどのように思うか,下段のインジケーターにも〇を記入してもらい,変化を比較しました。
授業開始前に,学生たちが付けた〇の位置は,11月24日の授業は平均で3.08。12月21日は3.82でした。(結果については図4,図5参照)


図1 配布したアンケート(クリックすると大きくなります)

授業の構成

授業は,リーフ茶サイト掲載の「どうしてリーフ茶の普及なの?(http://kyoto-leaftea.net/why1/)」と「どうしてペットボトルを減らそうなの?(http://kyoto-leaftea.net/why2/)」の記載内容をベースに構成し,これに「消費者ニーズ」と「需要創造」について考える時間(持続可能な暮らしを考えて・需要創造とのつきあい)を加え,以下の構成で講義しました。

■どうして,「リーフ茶の普及」なの?
1.緑茶の消費が近年大きく減っている
2.緑茶といえば,ペットボトルしか知らない人が増えている
3.京都の,日本の暮らしの根底
4.重要な地場産業
5.多くの人が,お茶の本当のおいしさとまだ出会っていない
6.実はとってもお得
■どうして,「ペットボトルを減らそう」なの?
1.環境負荷の大きさ
2.今も放置ペットボトルがいっぱい
3.海外に頼ったリサイクル
4.消費の増加と後追いリサイクル
5.負担の不公平
■持続可能な暮らしを考えて(需要創造とのつきあい)
1. 大量生産、大量消費、大量廃棄を掘り下げてみると
2. 需要創造の成功例
3. これからは、「必要」が出発点に

緑茶飲料と需要創造

講義の終盤、下の図2をもとに,消費者ニーズと需要創造の関係を考えてもらいました。初の缶入り緑茶飲料の発売は1985年。すぐに市場に受け入れられたのではなく,「清涼飲料統計年鑑」に「緑茶飲料」のカテゴリーが設けられたのは5年後の1990年のことでした。販売量が拡大するのは1996年の小型ペットボトルの解禁以降。市場が大きく反応するのに10年以上の時間がかかっています。
登場当初の消費者の反応は「お茶が100円(当時)もするの!」など冷ややかでしたが,飲料業界もあきらめずCMを続け,やがて清涼飲料業界を支える商品カテゴリーへと発展しました。ビジネスの側面から見れば「需要創造の成功」の見本のようなものです。対象の学生たちは,その「成功」の後に生まれ育った人たちです。その彼らに,あらためてこのプロセスを伝え、ここまでに伝えたリーフ茶の現状やペットボトルリサイクルの問題と合わせて,消費者ニーズと需要創造の関係を考えてもらいました。

図2 緑茶飲料の消費の伸び(ペットボトルや缶容器,紙パックでの販売。クリックすると大きくなります。)

図3 近年の清涼飲料の消費(炭酸飲料、ミネラルウォーター類、コーヒー飲料に次いで緑茶飲料の消費が多い)

これからは,「必要」を出発点に

結びとして,「これからは,「必要」を出発点に」と題した項目を設け,企業による需要創造に振り回されるのではなく,自身にとって必要なものを見極める目を養うことの大切さについて,以下のメッセージを伝えました。

これからは,「必要」を出発点に
「需要創造」そのものが良くないわけではない。
でも,それで失われるもの,新たに生まれる問題にも目を向ける必要がある。
新たな需要創造の働きかけは,今後も様々ある。その都度それに乗るのではなく,
自分にとって必要なものを見極める目が必要。
大量生産・大量消費・大量廃棄から,必要生産・適量消費・最少廃棄へ

授業終了後のアンケート

授業終了後,再びアンケートに向き合ってもらいました。尋ねたポイントは大きく2点。開始前に記載してもらった「キャンペーンへの印象」の変化と、約60分の話の中で、特に印象深かったパートはどこか。後者は最大5項目まで印を付けてもらいました。

「キャンペーンへの印象」について、「すべての授業内容を聞き終えた後,あらためてどのように思うか」,下段のインジケーターに〇を記入してもらいました。

インジケーターの〇の位置は,11月24日の授業では,開始前平均3.08でしたが,終了時8.27と,5.19ポイントも「共感した。関心をもった」に近づきました。12月21日の授業でも,開始前平均3.82でしたが,終了時7.18と,3.36ポイント「共感した。関心をもった」に近づきました。


図4 11月24日の授業での学生の変化


図5 12月21日の授業での学生の変化

印象深かったパートは?

印象深かったパートについては,11月24日の授業では,「(リーフ茶の方が)実はとってもお得」と「海外に頼ったリサイクル」が最も多く7人ずつで,「緑茶といえば,ペットボトルしか知らない人が増えている」が5人でした。

12月21日の授業でも,「海外に頼ったリサイクル」への反応が高く10人。次いで「緑茶といえば,ペットボトルしか知らない人が増えている」と「これからは、「必要」が出発点に」が7人ずつでした。

図6 アンケートの結果まとめ

成果と今後の課題

既述のように,両講座とも大学生を対象にしていますので、生まれたときからペットボトル飲料やペットボトル緑茶が当り前にある世代です。ですが,順を追った情報提供によって,削減の意義や現状の問題点について,限られた時間ではあっても理解を得ることができました。

特に、12月21日の授業では、印象深かったパートとして「これからは、「必要」が出発点に」をあげた学生も多く、この授業のねらいとするものが伝わったように感じます。

ただし,この2回の取組では,実際に茶葉から淹れた茶を飲んでもらう機会までは設けていません。そのため「体験」「実感」として,リーフ茶の良さに触れてもらったわけではありません。また平成28年度については,試験的な意味もあり,2講義だけの実施にとどまりました。

一般向けには,日本茶インストラクターが淹れた煎茶や抹茶等を賞味してもらう「平成の茶会」などを実施しています。これらの催しでは,参加者の多くから「普段飲むペットボトル緑茶よりおいしい」,「今後リーフ茶の利用が確実に増えそう」などの反応を得ています。今後授業と体験の場といった両者の良さを取り入れたプログラム開発を検討するとともに,より多くの学生たちを対象にできるよう,本プログラムの存在を発信していきたいと思います。(2017年3月10日公開)

以上

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