今こそ脱プラ!これからの循環型社会 第2回講座報告

2018年10月27日(土)「今こそ脱プラ!これからの循環型社会」第2回講座を開催しました。

第2回の概要
テーマ  解決策を考えるその1「減らす」
開催日時 2018年10月27日(土)13時30分から17時まで
会  場 パタゴニア京都店3Fイベントルーム(京都市下京区)
参 加 者 40名(講師スタッフを含めて47名)
講  師 龍谷大学政策学部准教授 金紅実さん
◇◇◇◇◇認定NPO法人環境市民理事,水Doキャンペーン事務局長 瀬口亮子さん
◇◇◇◇◇京都市ごみ減量推進会議職員 堀 孝弘
主  催 京都市ごみ減量推進会議
後  援 京都府,京都市,関西広域連合,京アジェンダ21フォーラム

~~~~~~~~~~~~~~~以下報告~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■講座の趣旨説明

<講座全体の説明>

深刻な海ごみ問題,脱使い捨てプラに向かう世界の動き,そして中国の廃プラ禁輸。プラスチックの大量消費がもたらす問題や,大量リサイクルの限界が見えてきました。昨年度は「海ごみ問題から考える私たちの暮らしとプラスチック」と題した3回連続セミナーを開催し,私たちの暮らしと世界の海ごみ問題とのつながりを考えました。
その中で,各地の川ごみ調査から,ペットボトルごみが常に上位を占めることが報告されました。これらの多くが海ごみになります。あわせて今年に入り,長年日本をはじめ世界の廃プラ,廃ペットボトルを受け入れてきた中国が,それらの禁輸を実施し,世界の脱使い捨てプラの流れが勢いを増しました。
今年度の講座では,ペットボトルを切り口に,リサイクルのあり方や使い捨てプラスチックの削減について,様々な分野の専門家を招き,私たちの消費及び社会のあり方について考えます。

<第2回の講座の説明>

10月27日,パタゴニア京都店で第2回“解決策を考える その1「減らす」”を開催しました。
中国の廃プラスチック資源の禁輸を受けて,現在日本では廃プラスチックの東南アジアや南アジアの国に輸出先を探しています。しかし,本来私たちがするべきことは新たな受け入れ先を探すことではなく,私たち日本人自身の消費のあり方を見直すことです。今回は3人の講師を招いて私たちの生活からどのようにしてプラスチックの利用を減らしていけるのかをお話しいただきました。

■講演者の名前(登壇順)

金 紅実さん(龍谷大学政策学部准教授)
堀 孝弘  (京都市ごみ減量推進会議職員)
瀬口亮子さん(水Dо!ネットワーク事務局長,認定NPO法人環境市民理事)

■各講演の内容

中国の廃プラ類資源ごみ輸入禁止政策から読み解く日本の廃プラ類資源ごみの在り方について

龍谷大学政策学部金紅実准教授から,日本でも話題になっている中国の廃プラスチック資源の禁輸に至るまでの流れとその背景についてお話しいただきました。
中国では1978年以降,経済開放政策を進めてきました。広大な国土,莫大な人口を誇る中国には経済発展を支えるだけの資源が必要でした。不足する工業原材料を補うために,低価格な再利用資源を世界各国から受け入れることになりました。2011年の調査によると中国への廃プラ輸出が多い国は日本,ドイツ,アメリカ,フランス,香港です。そして香港は中国への経由地にすぎないため,実質先進国が香港に廃プラを輸出し,香港がそのまま中国に輸出していると考えられます。こうして中国は世界の工場になりながら,世界中の廃プラを資源として受け入れていきました。
ニュース報道では最近になって急に問題になったような印象を受けますが,中国国内で廃プラスチックの処理が問題になったのは1990年代からです。そのころから農地や下水道などで廃プラスチックによる汚染が問題になっていました。それに対応するために中国では2001年から輸入制限,輸入禁止,輸入許可品目を策定しました。しかし,製品や素材の多様性や複雑さによる技術的な判断基準の難しさに加え,経済発展を優先したい市場の活発な動きに対して政策的なコントロールが難しく,またフォーマルな輸入ルートに加えて,インフォーマルな輸入ルートが後を絶たなかったため,十分な政策効果を発揮できませんでした。そのため,その後も幾度にも渡り輸入禁止品目の追加更新を行い,対策をとってきましたが,現状を抜本的に改善することができませんでした。そこで中国政府は2017年末から二段階に分けて(2017年末までに生活由来の廃プラ類ごみの輸入禁止,2019年末までに工業由来の廃プラ類ごみの輸入禁止)廃プラスチックの制限輸入から輸入禁止へと踏み切り,今に至ります。禁止にしたのは去年ですが,実はずっと前から中国は廃プラスチックの対策を一貫して取ってきたことになります。
世界各国が自国で発生した廃棄物をどのように減らしていくか,どのように自国内で適正処理をするかが,政策課題として一層求められていくことになります。今の世界ではカネとモノとヒトは先進国に集まりやすい一方で,廃棄物は先進国から途上国に流れる仕組みになっています。私たち一人一人がライフスタイルを変えていかなければ解決できません。

リーフ茶の普及でペットボトルを減らそうキャンペーンの紹介

続いて,京都市ごみ減量推進会議(以下,京都市ごみ減)の堀から,京都市ごみ減が取り組んでいる「リーフ茶の普及で,ペットボトルのごみを減らそうキャンペーン」について報告しました。
この20年で日本でのペットボトルの消費は約4倍になりました。ペットボトル飲料の中でも特に消費が増えているのは緑茶飲料とミネラルウォーターです。しかし,ここには問題がありました。ペットボトルのお茶の利用が増加する一方で,茶葉からお茶を淹れる人が減るだけでなく,そもそもの茶葉自体の消費が減っています。またペットボトルは軽くて割れず手軽で便利な容器のため,利用が増えましたが,その一方,様々な問題も生まれています。その1つがリサイクルで,国内の需要を大きく上回って回収される空ペットボトルは海外に輸出され続け,今日の「中国ショック」のような事態を生みました。中国がダメなら東南アジアへと行き先探しやサーマルリサイクルなどが模索されていますが,大事なのはそもそも増えすぎた利用を減らすことです。
そこで京都市ごみ減では「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」を実施しています。京都の土地柄にあった活動として,茶葉から入れるお茶に親しんでもらいながら,環境問題についても考えてもらうことを目的にしています。
実際に実施したことは日本茶インストラクターの方を招いた2R茶会,リーフ茶大学講義,またホームページでの情報発信です。成果として1,000人以上の2R茶会への参加を得ました。おいしい緑茶の淹れ方だけでなく,ペットボトル緑茶の利用ばかりが増えている状況やペットボトルリサイクルの現状などを伝えることにより,参加者のリデュース意識を高めることができました。
リーフ茶大学講義では,2017年度は京都市内5大学8クラスにゲスト講師として招いてもらい,925人の受講生からアンケート提出を得ました。提出されたアンケートでは「ペットボトル飲料をよく利用する」と答えた学生が,受講前4割だったものが,受講後は5分の1になり,「少し減らす工夫をしようと思う」と答えた学生を含めるとほぼ8割になりました,
また同キャンペーンを進める中で,海ごみや川ごみ問題の研究者,茶産地や茶業関係者,観光寺院,水道事業者など,環境以外の分野で活動する人たちと協働を深めることができたことも大きな成果です。今後もペットボトルに頼り切った消費のあり方を見直してもらうため,2Rを推進する活動として力を入れていきます。

世界の脱使い捨てプラスチックの動向と水Dо!キャンペーン

休憩をはさんで,水Dо!ネットワーク事務局長の瀬口亮子さんから,使い捨てプラスチック削減に向けた世界の取組について報告していただきました。
昨今の地球温暖化防止パリ協定やSDGsの浸透,海ごみ問題や中国のリサイクル資源輸入禁止を受けて,世界の国々や地域で使い捨てプラスチック削減の取り組みが加速しています。韓国では「資源の節約と再活用促進に関する法律」が1992年に制定され,使い捨て品の使用規制を進めてききました。飲食店の食器やホテルの歯ブラシなどの使い捨て品は使用の規制や有料化が定着しています。韓国の一定以上の規模のマクドナルドでは,温かい飲み物がマグカップで,冷たい飲み物はリユースプラスチックカップで提供されるそうです。
また日本でも最近有料化の方針が発表されていますが,レジ袋削減政策は2000年代から使用禁止や有料化に踏み切っている国もあります。イギリスや中国は無償配布禁止,イタリアやアメリカの州によってはプラスチック製レジ袋の使用を禁止しています。また,EUでは,海洋プラスチック問題の深刻化を受け,2018年5月に10項目のワンウェイプラスチック製品を対象とする新ルールを提案し,カトラリーやストロー,マドラーなどの使用が禁止される方針となりました。
次にペットボトル削減と水道水飲用を推進する各国の取り組みが紹介されました。アメリカでは,特に自治体が重要な役割を果たし,多くの自治体が公費でのペットボトル飲料水の購入を禁止しています。コンコードという町では住民投票により街中でのペットボトル飲料水販売禁止条例が可決され施行されました。市民や観光客は街中にある水飲み場やお店での給水を利用しているそうです。ロンドンでは,NGОのキャンペーンと市長の方針が合致してペットボトル削減のプロジェクトが始まり給水機の設置が進んでいます。パリでは水道局が人権的な配慮から水飲み場をたくさん設置しています。日本では奈良県生駒市が先進的に取り組んでいます。公共施設の自動販売機の設置を順次廃止し,給水スポットを設置しています。
むすびとして,プラスチックに限らず,ライフサイクルでのエネルギー消費を考えて,できるだけ「使い捨て」を回避することが大切であること,また誰もが行動変化を起こすために「社会のしくみ」をつくることが大切であることが強調されました。

■参加者から出された質問

この後,参加者から質問を募り,以下の質問が出され,それぞれに回答した後終了しました。
質問1 地域によって飲めない水があるのではないか。
質問2 ペットボトルは分別するより,燃やしてエネルギー回収した方が環境負荷が小さいのではないか。
質問3 地元に,給水所を作りたいと思うが,どこに働きかけたらよいか。
質問4 個人の善意や努力に頼らずに社会的な仕組みをつくるには,どのようなプロジェクトが必要か。
質問5 飲料自動販売機はどのように減らせばいいか。デポジット制度はどのように広めたらいいか。
質問6 水道事業民営化について,どう考えるか。
質問7 中国は廃プラを輸出しているのか。
質問8 日本の商品は過剰包装が多いと思うが,どのように減らせばよいか。

■各質問への返答

質問1について
水Dо!キャンペーンで水道水を飲もうと言っているのは,安心して飲める水が水道事業によって,供給されていることが大前提。安心して飲める水であっても,人によって体質などもある。何が何でも「水道水を飲もう」と主張しているのではない。ただ,サンフランシスコのように,海外にも安全で本当においしい水を供給している都市があるので,ぜひそのような都市では試してもらいたい。

質問2について
今回のテーマは「減らす」であり,「どのようにリサイクルするかや,リサイクルした方がよいのか否か」ではないことをご理解いただきたい。かつて「ペットボトルについて,リサイクルするより燃やした方が環境負荷が小さい」とした研究者の主張が大きく取り上げられたことがあった。ただ,その主張には生産者責任をどうするかといった考えが抜けていた。そのため時間をかけて浸透してきた拡大生産者責任の具体化を後退させかねないものがあり,この点工学的な議論だけでなく,社会制度から見た議論が必要だと思う。

質問3について
まずは市役所への働きかけから始めたらどうだろう。各市(質問者は京都市以外に在住)とも水道事業に市民が理解してくれることを歓迎すると思う。
(別の返答)スーパーの店頭などに「おいしい水の供給機」が設置されていることがある。有料や無料など様々だが,ペットボトル入りウオーターより安く,かつタンクも何度も使えるのでごみも出ない。こういったものがお住まいの地域のどこにあるか,仲間を集めてマップを作るなどの活動もできるのではないか。

質問4について
今回のセミナーでも「脱プラ」をタイトルに入れた。数年前なら注目を受けなかったかもしれない。もちろん「使い捨てプラの削減」だが,このような講座やセミナーが多く開催され,市民の理解が広まることで,行政も踏み込んだ施策を採りやすくなる。さらに言えば,今や国が大きく施策を前進させようとしている。これも長年かけた市民活動がそのような気運を育ててきたと考えることができると思う。

質問5について
デポジット制度については次回取り上げる。飲料自動販売機は飽和状態で,1か所に何台も設置されている場所があるように過当競争もあり,飲料自販機全体の数は頭打ちになっている。次回のテーマだが,飲料自動販売機を作っているメーカーにしても,デポジット用の自動回収機とそのシステム構築にシフトすれば,新たな市場を得ることができる。自販機メーカーが,販売機より回収機の開発に熱心になるような働きかけも,飲料自動販売機を減らす活動の1つになると思う。

質問6について
海外で一時盛んだった水道事業の民営化も,パリ市のように公営に戻す動きが出ている。ただ,日本では大きな流れとして民営化を取り入れようとしている。民営化が全く良くないわけではないが,料金の設定や老朽化した水道管の交換,事故時の対応など,契約上の注意が重要になると思う。

質問7について
今回の中国の貿易統計等の調査からは,中国からの廃プラ輸出は確認できなかった。

質問8について
二重包装や極端な過大包装は一時よりかなり少なくなったと思う。ただ,まだまだ多いというご指摘はその通りと思うので,海外の方の視点や意見(質問者は外国人)はすごく参考になる。

以上

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