海ごみから考える私たちの暮らしとプラスチック 第1回開催報告

 第1回講座の概要

テーマ  漂着ごみと川ごみから見たペットボトル~各地の調査からみたリサイクルの限界~
開催日時 2017年12月9日13時30分から16時まで
会  場 パタゴニア京都店3階イベントルーム(京都市下京区)
参  加  者 45名(講師スタッフを含めて52名)
講  師 大阪商業大学総合経営学部准教授 原田禎夫さん
◇◇◇◇◇全国川ごみネットワーク 伊藤浩子さん
◇◇◇◇◇関西広域連合 本部事務局 上坂昇治さん
共  催 京都市ごみ減量推進会議
◇◇◇◇◇パタゴニア日本支社

 会場・パタゴニア京都店3階イベントルーム

今回の講座の開催趣旨

はじめに,今回講座の主催団体の京都市ごみ減量推進会議(ごみ減)とパタゴニア日本支社から,それぞれの団体紹介があり,その後,ごみ減事務局から,本日登壇の講師及び報告者(原田禎夫氏,伊藤浩子氏,上坂昇治氏)の紹介,開催趣旨や海ごみ問題の基礎知識などの説明がありました。
海ごみ問題は,都市で暮らす私たちにとって身近に感じにくいものですが,世界的に大きな問題として注目されています。大きな問題ではありますが,私たちが日常生活で利用するプラスチックと大きな関係があることを,各地の「川ごみ」調査の結果から見ていくことなど,今回の趣旨として伝えられました。
また,ごみ減としては「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」の一環として,この講座に取り組んでいることについても紹介がありました。

大阪商業大学 原田禎夫准教授からの報告

次に,大阪商業大学総合経営学部の原田禎夫准教授から「海と川のごみから考えるペットボトル」としてお話し頂きました。原田先生は京都市に隣接する亀岡市在住で,NPO法人プロジェクト保津川の代表もされています。
ご自身の調査結果を元に,保津川流域の清掃活動では,集められたごみの中で,一番多いのがペットボトルであること,京都府舞鶴市沖の冠島における漂着ペットボトルの調査では,日本製が圧倒的に多かったことなどを示されました。また,ごみマップというアプリについても紹介されました。亀岡市内の河川ごみを見つけた市民が,このアプリを用いてスマ―トフォンで撮った写真を送ると,それがマップに表示されるというものです。市内のどこに放置ごみが多いか一目でわかり,行政や地域団体が集中的に清掃活動を行う対象地域を明らかにできるとともに,誰もが簡単に参加できる活動のデザインとして工夫されていると感じました。
発生抑制のための経済的インセンティブ(レジ袋の有料化やデポジット制)の活用についてもお話があり,近年海外のデポジットシステムが情報機器の進化で,大きく発展していることが紹介されました。ちなみに,観光地である嵐山で学生が行ったアンケートによると,ペットボトルのデポジット制度に賛成と答えた人は93%に上ったそうです。最後に,フランスなど他国の脱プラスチックに向けた動きについて紹介されました。

 大阪商業大学・原田禎夫さん

全国川ごみネットワーク 伊藤浩子さんからの報告

続いて,全国川ごみネットワークの伊藤浩子さんから「川ごみの現状と課題~全国規模の取組を~」としてお話し頂きました。荒川のごみについて,2016年に行われた河川清掃で集めたごみの中身の調査の結果,飲料ペットボトルが8年連続で一番多く,用途別に見ると74%が容器包装ごみであることが分かったそうです。これは工夫次第でなくせるものであり,そのためには社会の仕組みづくりが必要です。全国川ごみネットワークの活動,そして設立の経緯の紹介もありました。
さらに,川ごみやその対策にはどんな問題点があるかについて,河川活動団体の方の意見を集めたアンケート結果には,河川管理責任のある国や行政への不満もある一方,現場で活動している人たちの使命感のようなものも感じられ,とても興味深いものでした。ペットボトルのリサイクル率は83.9%ですが,裏を返せば残りの16.1%,つまり36億本はリサイクルされていないというお話もあり,これには参加者も驚いていました。

 全国川ごみネットワーク・伊藤浩子さん

関西広域連合・上坂昇治さんからの報告

休憩の後,関西広域連合・上坂昇治さんからの報告「淀川流域での取り組みについて」がありました。
関西広域連合とは,近畿圏内の府県(三重県除く)と政令市,隣接する鳥取県,徳島県で構成され,個々の行政の区域を超えた広域な問題の調査に基づく施策提言などに取り組んでいます。
関西広域連合には「琵琶湖・淀川流域対策に係る研究会」があり,取り組むべき課題に「海ごみ発生源対策」が含まれています。今後,調査やデータ収集,シミュレーションなどを経て,制度・施策の概略を設計し,2019年度の連合委員会で「必要な施策である」と判断されれば,2020年度以降に具体化されます。具体化したい施策として,デポジット制度を含めたペットボトルのリサイクル推進とレジ袋削減対策を挙げられていました。また,現在行っている河川清掃活動の連携や,調査,データの蓄積は継続していきたいと報告されました。

 関西広域連合・上坂昇治さん

以降,終了時間まで,参加者を交えた質疑応答の時間をもちました。

◇◇◇◇◇報告者:田中そら(奈良女子大学理学部)
◇◇◇◇◇加筆等:京都市ごみ減量推進会議事務局

今後の予定

以下の日程,内容で第2回以降を開催します。(第2回は定員に達したため募集締切。第3回のみ募集しています。)

・第2回 海ごみ問題と私たちの暮らし ~実態が明らかになってきた海ごみ問題~

日 時:2018年1月28日(日)13:30~16:00
講 師:高田秀重氏 東京農工大学教授
◇◇◇◇篠 健司 パタゴニア日本支社環境・社会担当
会 場:パタゴニア京都店3階イベントルーム

・第3回 脱使い捨て,脱プラスチックに向かう世界 ~フランスの「プラスチック製使い捨て容器・食器禁止法」の衝撃~

日 時:2018年3月3日(土)13:30~16:00
講 師:山川肇氏 京都府立大学教授
◇◇◇◇太田航平氏 NPO法人地域デザイン研究所ecotone代表
会 場:京エコロジーセンター(京都市伏見区)

以下,参加者からのアンケート結果

参加者にアンケートを配布し,一般参加者45名中,38名から提出を受けました。以下はその結果です。
「今回の感想」では,表記載の通り,四択で評価を求めたところ,18名から「とてもよかった」,16名から「よかった」の回答を得,「どちらでもない」「期待の方が大きかった」は,ともに0名でした。
「今日のセミナーは何で知られましたか」の問いでは,「知り合いから」が最も多く,口コミの効果の大きさが伺えました。次いで,ウェブサイトの告知をあげた人が多くありましたが,様々なメディア・チャンネルをあげた回答があり,地道な広報の努力の必要性を感じました。
今回は,川ごみや海岸漂着におけるペットボトルや多さなどについて報告を受けましたので,ペットボトル飲料の「ふだんの利用」及び「今後の利用」について尋ねました。「ふだんの利用」で「よく利用する」と答えた人は4名ありましたが,「今後の利用」では0名になり,ほぼ全員から「少し減らす工夫をしようと思う」または「これまでと同様,あまり利用しない」という返答を得ました。

参加者アンケート記述欄に書かれた意見等(一部抜粋)

今日の感想・今日得られたもの

・私たちの暮らしとごみ問題がつながっていることがあらためてわかりました。生活の中で何ができるかを良く考えていくこと。

・日本は,環境技術はあるが,仕組みづくりが進んでいないということ。デポジット制度の存在

・マイクロプラスチックについては知っていましたが,プラスチックごみがこんなに廃棄されているとは知りませんでした。マイボトルがもっと広まっていると思ったので,ペットボトルが増加していることは驚きでした。少しでも小さなことでもアプローチしていけば,少しずつ減らすことができるということ,でも根本的に解決しないと意味がないということ,仕組みを変えればできることがたくさんあるということも,今日知ることができました。

・海・川に流れつくごみの量は創造していたよもりはるかに多かった。ごみ問題について知ることができた。ペットボトルごみが一番多い。

・関西広域連合の活動を知ることができたこと(これからの活動)。ペットボトルのデポジット化はとてもいい案だと思う。

・ペットボトルが大問題だったのか!

・フリースがマイクロプラスチックと深い関係があった。ポイ捨てが原因じゃない(保津川のプロジェクトを始める前と今で,ごみが減っているのに,甲子園の海浜公園で一向にごみが減らないことに合点がいきました。)。デポジットのインセンティブを寄付で。メーカーとして「売りたい」フォーマットになりそう。

・マイクロプラスチック問題の現状。拡大生産者責任の制度上の問題。海辺・川辺の実態。社会の仕組みづくりの重要性。海外先進事例と国内の現状(遅れている)

・川や海に流出しているごみの大部分はプラスチック製品ということに驚きました。それからマイクロプラスチックというものを初めて知りました。普段使っている化粧品の中に含まれる細かいスクラブも海洋汚染を引き起こしていることにもびっくりしました。これからもう一回自己の生活様式とか習慣などを見直さなければならないと実感しました。

・私たちは今,マイクロプラスチックによる海洋汚染について勉強中で,よく理解できた。関西広域連合からの報告で神戸市も活動していることが判ってよかった。ただマイクロプラスチックについては…?

・講師方の前向きなアイデアや姿勢に接して,これからの勉強の力になりました。

・川ごみの種類を調べた結果,保津川ではペットボトルが一番多かったという事。ヨーロッパではペットボトルのデポジットが実施されていて,回収機というものがあるという事など,知れて良かったです。

・海外でのデポジットの事例。国内外のリサイクルの割合。年間36億本のペットボトルがリサイクルされていない。

さらに知りたいと思われたことはありますか(今日のテーマに関連することで)

・システムづくりで実践が行われている例。海外,国内,国,都道府県,市町村単位すべて

・マイクロプラスチックの生態系,人間への影響について

・政府,行政についての方向性(プラスチック生産ごみについて)の現状。魚介類へのマイクロプラスチックの影響。

・デポジット制度の内容

・海洋(太平洋や大西洋)に漂流する海洋ごみの現状について知りたいと思います。

・海岸にあるマイクロプラスチックの効率的な採り方(知って,行動する,大きな行動にするには。川原で婚活+ごみ拾いイベントなど,頭がやわらかくないといけないなぁ~)

・鴨川,桂川等,京都市内の河川のごみ現状。はかり売りや容器包装のリサイクルシステムはどうしたら社会に浸透させることができるのだろうか。

・プラスチック類を発生源から減らしていくことが必要であるということは当然ですが,上流の部分で。製造業者の責任を果たすことも不可欠であります。そこで現在プラスチックごみを減らすために,製造業者はどんな面で取り組んでいるのか知りたいです。

・ストロー以外に無くても良いプラスチック製品をあげたら?レジ袋,キャンディの個包装,過剰包装。

・神戸で,ボランティアで川沿いの遊歩道清掃を行っているが,毎回ペットボトル,レジ袋のごみが減らない。また車道沿いの生垣にはペットボトル他のごみが非常に多い。これがいつかは川へ。これを減らすにはどうすればよいのか詳しく知りたい。

・マイクロプラスチックの世界的な収支のフローをしっかり知りたい。(例えば,化粧品の添加物など)前向きな話としては生分解性プラスチックの現状やPET樹脂の代用品とか。

・バイオプラスチックが広まらない理由(価格?性能?他)

・次回,高田先生にマイクロプラスチック,特に一次マイクロプラスチックの講義をいただくのを楽しみにしています。

・個包装という便利なシステムも手放し難く,生分解性プラスチックはどうかについても知りたいです。

その他

・ペットボトル製造業者のペットボトルごみへの考え方はどうなっているのか

・非常にわかりやすかった。関西広域連合の話もよかった。

・根本的に生き方を変えていかなければならないと感じました。とても勉強になりました。どう実行したらいいのかを考えて行動していきます。

・いきなり専門的な話では?と心配でしたが,入門的な話で良かったです。

・次回も期待したい。

・2回目のセミナーが楽しみ。これを機に私たちのグループも頑張りたい。

アンケート記述(抜粋)以上

 終了後講師を囲んで,有志による懇親会を催しました。

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