脱プラ、減プラ、キーパーソンインタビュー第4回 坂野晶さん

Think globally, act locallyな活動から得られること

脱プラ、減プラ、キーパーソンインタビュー第4回
テーマ:Think globally, act locallyな活動から得ること
話し手:NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー(http://zwa.jp/)理事長 坂野晶さん
日 時:2019年8月5日13時から
聞き手:京都市ごみ減量推進会議職員 堀 孝弘
場 所:京都大学構内

Act globallyに活躍する坂野晶さんへのインタビュー

今回登場していただくのは、徳島県上勝町に本拠を置くNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー理事長の坂野晶さんです。上勝町といえば、全国で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をしたまちとして有名で、45ごみ分別やごみ収集車が走らないまち、葉っぱビジネスなどユニークな取組で知られ、今や国内だけでなく海外からも視察者が来るほどだといいます。

そんな上勝町ですが、四国の山間地のごく小さなまちであることに違いありません。世界で活躍されていた坂野さんがどうして上勝町で活動しようとされたのか、そこからお話を伺いたいと思います。

坂野さんと上勝町との出会い

聞き手「今日はどうぞよろしくお願いします。坂野さんは、まさに、Think globally, act locallyを超実践するような人生を送られたわけですね。

アイセックメンバーとしてモンゴル。就職してフィリピン。今年はダボス会議の共同議長、このあたりだけでも十分「おもしろい人生」だと思いますが、上勝町との出会いが気になります。世界で活躍されていた人が、葉っぱビジネス等で注目されていたとはいえ、四国の山間地に入って、そこを自身の拠点にしようとされたきっかけや、決断の決め手は何だったのか、教えてください。」

坂野「きっかけとしては2つあります。大学の同級生が上勝町の出身でした。ゼロ・ウェイスト宣言したまちとして関心があり、大学生の時、よく遊びに行きました。大学卒業後、就職し海外で働き、その後大学院に進学する予定でした。大学院への入学まで半年の期間があり、その間上勝町で友達のカフェを手伝っていました。同じ時期、ゼロ・ウェイストアカデミーの運営責任者が組織の次を担える人を探していました。まずは、私の友達に白羽の矢が立てられました。しかし友達はカフェを経営しているので1人では難しく、1人で難しければ2人であれば出来るかもしれないとなったのです。

聞き手「流れ弾に当たったような感じですね(失礼しました)。でも、海外の大学院はどうされたのですか。」

坂野「大学院への進学が決まっていたのですが、ゼロ・ウエイストの取組に魅力を感じました。大学(学部)では政策学を学びましたが、法律をつくる、そして実際に導入するのは簡単なことではありません。構想が具体化し導入され、実際に機能するまで長い年月が必要になります。それよりも小さな単位でのトライ&エラーが重要です。そのような現場を持つことができるのは、何ものにも増して魅力に感じました。

聞き手「大学院は諦めたのですね。」

坂野「いえいえ、諦めたわけではなく、今京都大学の地球環境学舎に通っています。」

聞き手「またもや、失礼しました。」

ゼロ・ウェイストアカデミーでの活動

聞き手「ゼロ・ウェイストアカデミーでは、どのようなことをされたのですか。」

坂野「もともとやっていたことを発展させようと、2つのターゲットを設定しました。1つは海外からの人材流入の促進。上勝町には、45分別やごみ収集車の走らないまち、焼却炉のないまちとして日本でユニークな存在として有名になり、国内からの視察が増えました。海外からの視察もありましたが、それを爆発的に増やそうと英語での発信を強化しました。タイミングもよかったと思います。世界的なごみ問題への関心が徐々に高まりつつあったので。

もうひとつは、ゼロ・ウェイスト認証制度。お店のごみ削減の取組をブランディングしようと思いました。なぜ、その制度を作ろうとしたかですが、ゼロ・ウェイストの取組を行政に働きかけて、ごみ処理の仕方を変えようとしても、国内にそのような前例は非常に少ない。実現するとしても時間がかかります。個人・市民への啓発も長い時間が必要です。

また、上勝町内で分別をどれだけ頑張っても限界があります。製造段階で変わらないといけません。しかしメーカーが製品づくりを変えるには「消費者からの要望・理解」が必要です。アプローチとして間を埋めることを考えました。店は大きな消費者です。仕入れをします。消費者としての店が変わることでインパクトも大きいと考えます。店が変われば、店を利用する個人の消費にも影響を与えます。」

まちの経済活性にも寄与

聞き手「ゼロ・ウェイストアカデミーが上勝町にもたらしたものとして、ごみの削減以外にどのような成果がありますか。」

坂野「ゼロ・ウェイストアカデミーには、町内の人も参加します。分別の指導や町の中期計画の策定メンバーも参加してもらっています。研修の仕方は町外や子ども向けなど対象によって対応しています。町内同士、町内と町外の人をつなぐ効果があったと思います。

町内だけでなく町外から人が来ることで経済効果があります。しかしコンテンツが必要です。ごみに関しては、『ごみステーションを見て視察終了』、といったことが多々ありました。ごみステーションで終わらず、町内の店を周ってもらいたいのです。ゼロ・ウェイスト認証店の認証理由は店によって違います。店に行かないとわからないようにしています。ゼロ・ウェイスト認証店をまわってもらうことで、町内を回遊し、お金を落としてもらう仕掛けにしています。日帰りではなく、できるだけ宿泊してもらいたいのです。」

聞き手「上勝町には宿泊施設もあるのですか。また、連続講座などもされるのですか。」

坂野「町内には第三セクターの温泉宿泊施設の他、昔ながらの宿もありますが、人が来るようになり農家民宿をする人も増えています。

開催日ごとの期間を空けた連続講座は開催していません。例えば毎月1回、5回連続などの講座のことです。遠方の人が何度も上勝町まで来てもらうのは難しいからと思っています。町内に泊まり込んでもらい短期集中講座を行うか、町外の他団体が企画する連続講座の一部に、上勝町での開催を組み込んでもらうようにしています。こういったことでも、町外からの来訪者の宿泊率は高くなっています。」

上勝町だけでなく、他地域との協力が必要

坂野「私の場合、上勝町に惹かれたというより、ゼロ・ウェイストアカデミーをここまで続けてきたことへの敬意がありました。ただし、まちの将来を考えると、今後何十年もこのままとは限りません。高齢化は深刻で、様々な取組で一時的にまちが盛り上がり、多少の人口が増えたとしても長期的な問題解決ではありません。緩やかに問題が先送りになるだけです。

上勝町が45分別を実施し、徹底した資源化を実施しても、それで廃棄物がなくなるわけではありません。ものは他所から入ってきます。仮にゼロ・ウェイストが実現しても、それで上勝町が抱える様々な問題が解決するわけではありません。さらには上勝町だけで様々な問題は解決できません。上勝町で優れた経験が生まれても、それを上勝町が、他地域の行政に働きかけるのは難しいことです。そこはNPOとの役割分担になると思います。

町民が地域内で買うものは限られます。町内の小売店でレジ袋を断ったり、容器持参で買い物をすればポイントが得られるようにしています。世界的な関心事になっている海洋プラスチックごみでも、プラスチック製の容器包装ごみが問題で、こういった身近なところから取組を進めていく必要があります。ただし、町民がよく利用するスーパーは町外にあります。小売店を通じた発生抑制を実現しようとしても難しいものがあります。

そこで飲食店に協力してもらうことにしました。店で使用するものをリスト化して出してもらいお客さんが商品を必要量買えるように、はかり売りやバラ売りを実施してくれる店もあらわれました。町内にある飲食店10店のうち7店がゼロ・ウェイスト認証を受けています。そのうち2店ではかり売りを実施しています。町内のイタリアンレストランは町外の人も多く利用します。使用しているこだわりの食材をはかり売りを通じて情報公開することで、手間は増えますが自分たちの価値を高めることができます。

上勝町で地道にやってきたことが生きてきた

聞き手「今日はありがとうございました。最後に上勝町、そしてゼロ・ウェイストアカデミーさんから、Think globally, act locallyなご提言をいただけたら幸いです。」

坂野「海洋プラスチック ごみに関しては、今までどこか他人事のように感じていた人もいると思いますが、大きく取り上げられることで、自分たちの問題として考える人が増えてきたように思います。だからこそ今、上勝町で地道にやってきたことが生きてきた、生かされつつあるように思います。

暮らしを見直すことが必要で、プラスチックを減らして行く流れは止まらないと思います。プラスチックを使わなくても、便利さを損なわずに暮らせる、そんな例を多く発信していくことが必要だと思います。」

以上

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