海ごみから考える私たちの暮らしとプラスチック 第2回開催報告

第2回の概要

テーマ  海ごみ問題と私たちの暮らし ~実態が明らかになってきた海ごみ問題~
開催日時 2018年1月28日(日)13時30分から16時まで
会  場 パタゴニア京都店3階イベントルーム(京都市下京区)
参  加  者 42名(講師スタッフを含めて50名)
講  師 東京農工大学農学部教授 高田秀重さん
◇◇◇◇◇パタゴニア日本支社環境・社会担当 篠 健司さん
共  催 京都市ごみ減量推進会議
◇◇◇◇◇パタゴニア日本支社

今回の講座の開催趣旨

京都市ごみ減量推進会議(以下,ごみ減)事務局スタッフの「こんな寒い日にわざわざ来てくださってありがとうございます。」というあいさつから今回の講座は始まりました。今回の参加者は42名,うち約半数が前回からの参加者でした。
まずは主催団体の紹介が行われ,パタゴニア京都店スタッフより,パタゴニアが環境問題,特に気候変動と生物多様性のテーマに力をいれて取り組んでいることが紹介されました。
次にごみ減について,京都市だけではなく,市内の事業者や市民団体などと一緒につくっている協働組織であること,フリーマーケットをはじめ,様々な事業に取り組み,その中の「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」の一環として,今回の講座を行っていることなどを紹介しました。
その後,海ごみの実態が徐々に分かるようになり深刻さが明らかになってきた今,それがどのように私たちの生活と関わっているかを学ぶという開催趣旨の説明,今回の講師の紹介,前回の講座内容のおさらいが行われました。

(前回の講座内容は,下記URLをご覧ください。海ごみから考える私たちの暮らしとプラスチック 第1回開催報告 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1308/

東京農工大学農学部 高田秀重教授からの報告

続いて東京農工大学の高田教授から,「マイクロプラスチック汚染低減のための使い捨てプラスチック削減」という題でお話を頂きました。
まず,マイクロプラスチックとはそもそもどのようなものか紹介がありました。海洋を浮遊するプラスチックごみのうち,5mm以下のものをいいます。プラスチックごみが海に流れ着き,マイクロプラスチックとなるプロセス,海洋生物への影響,プラスチックに含まれる可塑剤から検出される有害化学物質の話まで,最新の研究も踏まえながら説明してくださり,私たちが普段日常的に使用しているプラスチック製品がいかに環境に影響を与えているかが感じられました。
世界の海洋には約5兆個ものプラスチックごみが浮遊しているとの調査報告があり,今世紀なかばには世界の海の魚より,プラスチックごみの方が多くなるとの試算も紹介されました。
この問題の深刻化を防ぐため,リサイクルの強化ではなく,プラスチック使用量全体の削減が必要であること,また,海外の先進的な取り組みや,日本の対策の遅れなどが紹介され,私たちが個人レベルで何ができるのかというお話もありました。
お話の途中では,高田教授が採取されたお台場の海岸の砂に,水を混ぜて浮遊するマイクロプラスチックを確認し,水鳥の体内から発見されたマイクロプラスチックの量を人間の割合(体重比)に置き換えて,その実物を見たりする場面もあり,マイクロプラスチックを直感的に理解できるような工夫した説明がされていました。

高田教授の資料は,以下のURLで公開されています。
ペレットウォッチ・ジャパン 「プラスチックの時代からの脱却を」
http://pelletwatch.jp/micro/


パタゴニア日本支社 篠健司ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーからの報告

続いて,パタゴニア日本支社の篠健司マネージャーから「マイクロファイバー汚染とアパレル産業」という題で報告がありました。
現在,海ごみと密接な関係が指摘され問題視されているものとして,化学繊維から出るマイクロファイバーがあります。その発生源の1つである衣料品を生産・販売するアパレル産業は,その防止のために何をすれば良いのでしょうか。パタゴニアは,フリースを開発し世に送り出した企業として社会的責任を感じ,大学機関と協力して独自に実験を行っています。
自社商品からどのような条件で,どれだけのマイクロファイバーが流出するか調べ,予防のための様々な対策を講じています。例えば,そもそもマイクロファイバーが発生しづらい構造やデザインの服づくり,マイクロファイバー防止用の洗濯ネットの販売(現在は欧米のみ),マイクロファイバーが発生し海に流れていくまでを可視化する啓発動画の作成などが現在行われており,今後も取組を進めていくとのことです。

質疑応答

その後,休憩をはさんで質疑応答の時間がとられました。神戸や山梨,東京から講演を聞きに来た人もいるなど大いに盛り上がりました。いくつかの質問とその答えを以下に紹介します。

【質問】
日本では3Rの中でリサイクルが最重視されているが,欧米ではリデュースが評価されている。私もリデュースが重要だと思うが,どう意識を変えていけば良いか。

《高田教授からの答え》
環境省が3Rの見直しを進めるなど,風向きが変わってきている印象がある。海外の追い風を利用して,消費者がRefuseを加えた4Rや5Rなど,ライフスタイルを示していくなど,皆で意見を表明していくことが重要。

【質問】
イベントでのプラスチック食器の削減のため,リユース食器レンタルの事業を行っているが採算が合わない。環境への配慮とコストの対立,どう乗り越えたらいい?

《高田教授からの答え》
コストがかさむなら補助金などで補填するか,フランスのように法律でプラスチックの使用を規制するしかない。どれも行政レベルでしかできないことで,個人単位できることには限界がある。そこで,皆で協力して行政に訴えかけていかなければならない。

【質問】
プラスチックの代替製品としてセルロース由来の製品を例に挙げていたが,バイオマス由来の生分解性プラスチックではだめなのか。

《高田教授からの答え》
それもありだと思う。他,色々な選択肢が必要である。

報告者:見上太郎(京都大学文学部4回生)
加筆等:京都市ごみ減量推進会議事務局

今後の予定

以下の日程,内容で第3回講座を開催します。

・第3回 脱使い捨て,脱プラスチックに向かう世界 ~フランスの「プラスチック製使い捨て容器・食器禁止法」の衝撃~

日 時:2018年3月3日(土)13:30~16:00
講 師:山川肇氏 京都府立大学教授
◇◇◇◇太田航平氏 NPO法人地域デザイン研究所ecotone代表
会 場:京エコロジーセンター(京都市伏見区)

参加者からのアンケート結果

12月9日に開催した前回に続き,今回もほとんどの参加者から「とてもよかった」「よかった」という回答を得ました。

前回は,2人の講師から,川ごみに占めるペットボトルごみの多さについて報告があり,アンケートでも「ふだんのペットボトル飲料の利用」「今後の利用」について尋ねました。前回セミナーの参加者に,その後のペットボトル飲料の利用を尋ねたところ,「今まで通り利用している」は0で,「もともとあまり利用しない」も含めて,何らかの「減らす意識」や「行動」に結び付いたものと思われます。
今回のセミナーの参加者は,前回出席者も含めて,ほとんどが本会議のイベント等に初めて参加した人たちですが,「海ごみ」や「アウトドアライフ」に関心のある人たちであり,環境意識の高い人たちであると思われます。そのため,今回の参加者の中には,「ふだんペットボトル飲料の利用をよく利用する」と答えた人はいませんでした。

アンケート記述欄に書かれたコメント(一部抜粋)

今日の感想

今日得られたもの

・レジ袋が環境に与える影響が科学的にわかった。日本の対応が遅れていることを実感した。
・環境ホルモンのことを思い出した(忘れていたため)。
・世界中の様々な企業・団体がプラスチックごみについて取り組んでいることを初めて知った。木質製品よりも身近になっているプラスチックがいかに多いことか。なるだけ5Rを実践していきます。
・プラスチックが世界の海にどれほど浮遊しているか。海の汚染,有害物の飲み込みにより魚にもたらす影響,やがて人間にどのように影響するか?渡り鳥の生態など。
・プラスチック廃棄が環境に与えるインパクトの大きさについての認識。
・多くの人が集まるイベントのやり方を変えていかなければならないと思いました。
・具体的なマイクロプラスチックの影響を知ることができたので,周りの人たちに伝えやすくなりました。
・マイクロプラスチックの海洋汚染に関する現状と解決策において,各国の対応と日本の現状をあらためて知った。
・Reduceが一番である。蛇口を閉めること。流れ出たものを回収するより,効果ははるかに大である。これには行政のInitiativeが必要である。
・難しい内容を,わかりやすく聞くことができました。
・予防が重要であるということ。リサイクルはかえって費用がかかるということ。
・私たちが行っているリユース食器レンタル事業の社会的意義をあらためて認識できた。
・高田先生のお話しはたいへん重要なことで,自身の生活の中で意識するだけでなく,まわりにも伝えていきたいと思います。個人の生活を変えるだけでは問題は解決せず,国など行政の決断がほしいです。生産者が責任を追及されないままでは発生抑制は進まないと思いました。
・マイクロプラスチックの問題を初めて知った。
・マイクロプラスチックによる海洋汚染の現状。レジ袋をなくすという暮らしへのアプローチをすべきという事実。ペットボトルを使わない,リーフ茶,コーヒーも自分で淹れる。
・大洋を流れているプラスチックのデータがあってわかりやすかったです。生活をどうやって変えられるのかわかりません。日本のプラスチック対策,必要だと思いました。⇒スーパーに提案するなどやりたくなりました。
・知らずにプラスチックを使い続けてきたことにびっくりした。生活スタイルを今すぐできることから変えていこうと思った。
・フリースを洗濯することで,マイクロプラスチックが発生している事にびっくりしました。
・プラスチックの大量使用→大量リサイクルで解決できない。海ごみの発生が以前からわかっていたが,今に至るまで具体的な対策が講じられておらず,ようやく海外が先にアプローチし始めて,日本が後発状況である。でもこのままじゃダメ。
・プラスチックの利用規制の必要性。小魚の内臓は食べない方がよい。→煮干しのハラワタは必ずとって出汁を取る。バイオマス製品の開発を進めることの必要性。
・プラスチックの環境や生物への影響についての知識
・魚の8割からプラスチック破片が検出されるという事実。プラスチックの添加剤が有害であるということ。
・高田先生のお仕事と考えを理解しました。
・繊維(くず粉)の問題に対する話が聞けた点
・プラスチックが石油ベースであることから,できるだけ使用をさけてきましたが,添加剤が環境だけでなく人体に対して,少なからず影響があることが勉強になりました。
・とっても勉強になりました。今日高田先生のご報告を聞いて,今までの生活様式を真剣にあらためないといけないなと感じました。特に印象に残ったのは「ノニルフェノール」という環境ホルモンの内容です。確かにこれは人間の健康と密接につながっているので,きちんとプラスチックごみの問題を考えなければならないと思いました。
・高田先生のセミナーの資料や講演のレジュメ等を読ませていただいたが,本日直接お話を伺い,非常に良く分かった。今我々のグループもWEBでマイクロプラスチックによる海洋汚染について発信中で,判り易く発信を続けることが必要と感じた。マイクロファイバーの発生の洗濯機の機種による差について,家でも考えようと思う(次回購入時に)
・ありがとうございます。大変すばらしい講演で,今まで勉強は自主学習で不明な点も多くありました。高田先生の講演で,不明点が見えてきたところがありました。
・高田先生のご意見がよくわかった。
・研究とビジネスの両面から最先端の取組が学べた。高田先生の「実験」が面白かった!
・4R,5R,デポジットシステム他
・「奪われし未来」「プラスチックスープの海」等読んでいたので,お話の内容はよくわかりました。知らないこと(フリースのこととか)も多かったので,参考になりました。
・海洋プラスチックの現状及びその研究状況が短い時間で良く理解できる話だった。
・お弁当は中身でなく,ケースで選ぶといあまり今まで優先順位が高くなかった視点。プラスチック容器が気になっていて,添加物と農薬,肥料で選んでいました。

さらに知りたいと思われたことはありますか(今日のテーマに関連することで)

・北欧やオランダなど環境先進国のプラスチックを使用しない代わりに何を使っているのか。
・プラスチック業界で先進的な取組をしているところはあるか? 代用のきかないプラスチックと代用が可能なプラスチックを,個人で決めるのは難しいので,業界として代用のできる製品が何か知りたい。
・生分解性プラスチックの普及支援策。プラスチック容器などの使用量削減のための政策。
・石油製品を減らしていって,経済的には大丈夫なのかな?
・マイクロファイバー特有の環境負荷があれば,知りたいです。
・日本におけるプラスチック問題の今後の対応の促進について,もっと聞きたい。
・行政のInitiativeが重要であるが,日本では世界に比べて立ち遅れている。本日のセミナーでは行政のInitiativeが具体的に語られなかった。なぜ消極的なのか,今後の取り組み方がどうなのか,話を聞きたかった。
・SDG’sについて
・世界の動き,運動を加速させるには何が必要か
・ウォーターサーバーを学校に導入したいとして,どういう手順でできるのか,会社に頼めばいいのか。
・プラスチックの代わりに使えるものをもっと知りたい。(プラスチックを使う前の)日本の昔の文化をもっと知りたいと思いました。
・プラスチックごみによる海洋汚染の深刻さを知る。対策が必要であるが遅れている。
・環境はもちろん,人体に影響が出始めていることにショックを受けました。
・予防策が国際的に進んでいる中で,どのようなプロセスで進んでいったか,興味がわきました。
・私のような一般人がプラスチックの代替品で,何を使っていけば環境にいいのか知りたい。また個人的ですが,オンラインで小売りをしているのですが,梱包・発送にどうしてもビニールを使用してしまう(防水,汚れ防止)ので,この対策として何か行われている例などあれば知りたい。
・ペットボトルの代替容器として,昔主流だった「びん」に環境的(経済的)インセンティブはあるでしょうか。
・下水処理場におけるマイクロプラスチック対策
・お皿を洗うスポンジも,マイクロプラスチックの発生源になるというお話の後に,セルロースやひのきのたわしの代替品の話がありました。他にも代替品があれば知りたいです。
・環境省というか国の考え方を知りたい。国の人の話を聞きたい。
・容器プラスチック削減の具体的な方策
・日本政府は具体的にどうしようとしているのか。首相の答弁で具体策が不明(1/26の国会答弁)
・出口の「何をすべきか」の話は,分散しがちで集約されにくいと思うが,各地の活動の紹介。
・バイオマス素材の容器で食材を買うことのできるお店のリスト。持ち込み容器で買い物ができるお店のリスト。友人や近所におかずなどを分けるのに,容器を何にするか工夫できることが少ないと感じています。懐紙,半紙の使い方を勉強したいと思っています。

その他

・自分にできることをしたい。今すぐにしなくても,会社内にプラの使用削減を提案するなど考えている。このような取組をしていただき,ありがとうございます。
・現状でも大変です。どのようにプラスチック製品を再利用して,自然ごみとして捨てないよう個々が注意する必要があると思います。
・リユースに取り組む団体があることをもっと知ってもらいたいです。
・時間に追われて便利さを追い求めていたが,余裕のある暮らしをしたい。エネルギーを無駄に使わない。お茶を淹れ,水筒を使うなど。
・川や海に流れ出すことを念頭に生活を工夫していきたいものです。
・国の仕組みとしてのバイオマス製品の開発(例ストローは昔の麦製を)。消費の仕組みの改革の必要性。日本は国土の70%が森林。その資源を生かした製品が必要。
・家事をもっと評価する文化を育ててほしい。
・(持参容器に食材を入れてもらうことについて)地元の商店街からスタートするのがよいのだろうけど,「持参容器に食材を入れて」というのは,ちょっと恥ずかしいかも。顔の見えるお店で買うことを増やさなあかんなぁと,書きながら実感。

アンケート記述(抜粋)以上

終了後、有志による懇親会を催しました。

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