今こそ脱プラ!第4回報告「リユースびんの基礎知識」
(第3回報告〔洗びん工場見学〕の補足)
□以下の「リユースびんの基礎知識」は,「今こそ脱プラ!第4回講座(12月2日)」の前半に,京都市ごみ減量推進会議事務局堀から報告したものです。11月10日に実施した前回(第3回・洗びん工場見学)報告とあわせてお読みいただけると理解が深まります。 執筆 及び 作図 堀 孝弘
■リユースびんの基礎知識
1.リユースびんの基本的な流れ
□かつて飲料や調味料の大半は,回収・洗浄して何度も繰り返し使う「リユースびん」で販売されていました。その基本的な流れを図1であらわしています。
□消費者が使った後の容器は,小売店やびん商を通じて,中身(酒類・飲料・食品)メーカーに戻ります。容器は洗浄して繰り返し何度も使われます。
□この場合,使用後の容器をリユースする費用(回収,洗浄,移送)は商品代に含まれ,受益者である消費者(購入者)が負担しています。
2.リユースできるはずの容器がリユースされなくなった
□高度経済成長期を経て人件費が高くなると,資源の価値が相対的に低くなり,回収し洗浄した容器より,新しく製造した容器の方が安くなることが多くなりました。中身メーカーが新しい容器を優先して選ぶようになると,小売店でも空容器を引き取ってくれなくなり,ごみとして捨てられる空容器が増えていきました。(図2)
3.ワンウェイ容器の処理の流れ その1
□一方,1970年代以降,一度しか使わないワンウェイ容器が増えていきました。スチール缶,アルミ缶,紙パック,ペットボトルなどです。消費者が排出するワンウェイ容器は,1980年代中頃までほとんどがごみとして捨てられ,その大半を市町村が処理・処分していました。この当時,家庭ごみの約6割を容器包装が占めていました(容積)。
4.ワンウェイ容器の処理の流れ その2
□ワンウェイ容器のほとんどが貴重な金属や石油などを原料に作られています。そのため,一度の使用でごみになるのはもったいないと,各地でリサイクル運動が盛んになりました。1980年代中頃以降,各地の市町村は資源となる容器を分別・リサイクルするための仕組みを整え,住民周知をはかるようになりました。(図4)
5.種類だけでなく,量も増え続けたワンウェイ容器
□リサイクルは盛んになりましたが,ワンウェイ容器は次々と主役交替しながら増え続け,その都度,新たなリサイクルの仕組みづくりが必要になりました。
□1997年には容器包装リサイクル法(容リ法)が制定され,ワンウェイ容器を利用する商品(食品・飲料など)メーカーにも一定のリサイクル責任が課されるようになりました。しかし,最も負担の大きい作業は,地域住民からの空容器の回収で,そのほとんどの作業は,容リ法ができた後も市町村が担い続けています。
6.企業にリサイクル義務が課されない容器もある
□日常よく使われている容器でも,材質によって生産者・販売者にリサイクル義務が発生しないものがあります。アルミ缶,スチール缶は,ほとんどの市町村が住民から分別回収していますが,生産者・販売者にリサイクル義務は発生しません。
7.ペットボトルは,リサイクル義務があるが…
□缶容器には,容器の生産者や,容器を用いて商品をつくる生産者にリサイクル義務が課されていないことを紹介しましたが,近年は消費量が減り続けています。一方,ペットボトルは,生産者等にリサイクル義務が課されていますが,消費量は増え続けています。
それだけペットボトルが手軽で便利ということではありますが,後述するように,リサイクル義務といっても,ごく軽微なものに過ぎません。
8.容リ法の概要
□ごく簡単に容リ法の仕組みを紹介します。容器や包装資材を製造する企業,それらを用いて商品を作る中身メーカー(食品,飲料,酒造,日用品,化粧品等)や小売店などは,特定事業者と呼ばれリサイクルのための義務が発生します。容器包装の材質や使用量に応じて,日本容器包装リサイクル協会にリサイクルの委託金を支払います。全国の特定事業者から集めた委託金を,全国の市町村等に配分するなどして容器包装のリサイクルが推進されています。
9.ペットボトルのリサイクル委託金の低下
□図9はペットボトル1kgあたりのリサイクル委託金の推移です。ペットボトルが普及し始めた1990年代後半は1kgあたり100円以上していましたが,2000年代後半以降,ボトル1本あたりのリサイクル委託金はごくわずかな額になりました。
リサイクル委託金の低下は,「リサイクルが普及し,再生品の需要が多くなった成果」と受け取ることもできます。しかし,国内での再生品の需要は伸びず,回収されたペットボトルの4割以上が海外に「輸出」されていました。
(※2018年1月,ペットボトルを含む廃プラの最大の輸出先だった中国が,廃プラ輸入を禁止し,そのため2018年度のリサイクル委託金は急伸しています。)
10.リサイクルにかかる費用を全額
□少し古い資料ですが,図10は日本とドイツの容器包装のリサイクル委託金を比べたものです。リサイクルにかかる費用を,ほぼ全額,企業に負担させているドイツとの違いがはっきりわかります。逆の見方をすると,日本の場合,リサイクルの推進に市町村が大きな負担を負っているといえます。
11.もう一度,リユース容器とワンウェイ容器を比べると
□リユース容器とワンウェイ容器の使用後の流れを比べると,リユース容器は回収して繰り返し使われるため,ごみの発生が少ないだけでなく,税金を使わず,自立的な経済行為として再使用(リユース)されています。ワンウェイ容器は一度しか使わないため,常に多くの資源を必要とするだけでなく,ごみとして処分する場合でも,リサイクルする場合でも,多くの税金を必要としています。
□しかも,2018年の中国の廃プラ禁輸により,海外「輸出」に頼っていた日本のプラスチックリサイクルの仕組みは大きな打撃を受け,今後のリサイクルのあり方などを考え直す必要が生まれています。
12.ここまでの話をまとめると
□リユース容器の減少は,消費者のライフスタイルや小売店の販売形態の変化に,ワンウェイ容器ほどうまく対応できなかったことが大きな要因です。ですがここまでに紹介したように,リユースよりリサイクルを優先した社会制度にも減少要因の一端はあります。
□プラスチックリサイクルが大きな壁にぶつかっている今,温暖化防止や海洋ごみ対策などの課題も見据え,社会をあげてプラスチックの総量抑制に取り組む必要が生まれています。
13.とは言っても,多くのワンウェイ容器が使われている
□ワンウェイ容器,特にプラスチック製容器の総量を減らす取組が必要です。とは言っても,現実には多くのワンウェイ容器が使われていて,すべてをリユース容器に転換することは不可能です。
□今後も一定量のワンウェイ容器が使われ続けるとして,それらは今まで通り,市町村が税金を使って回収しなければならないのでしょうか。また,確実な回収のため,意識や道徳心の向上に頼るより効率的な回収方法はないのでしょうか。12月2日(日)開催の第4回講座は,「確実に回収する」をテーマにします。
以上