今こそ脱プラ!セミナー第4回概要
テーマ 解決策を考えるその3「確実に回収する」
開催日時 2018年12月2日(日)13時30分から17時まで
会 場 パタゴニア京都店3Fイベントルーム(京都市下京区)
参 加 者 35名(講師スタッフを含めて40名)
講 師 原田禎夫さん(大阪商業大学准教授)
主 催 京都市ごみ減量推進会議
後 援 京都府,京都市,関西広域連合,京アジェンダ21フォーラム
今こそ脱プラ!講座第4回のテーマは,「解決策を考える その3 確実に回収する」。講師は,大阪商業大学原田禎夫准教授に務めていただきました。以下は,原田先生講演の後半部分です。
◆主催者からの問題提起
原田先生の講演に先立ち,主催者から今回の「確実に回収する」というテーマ設定に関して問題提起をしました。
・今後も市町村が容器包装リサイクルの回収の主役なのか
これまでの講座で,ペットボトルをはじめとしたワンウェイ容器の大量使用と,現在の容器包装リサイクル制度について学びました。市町村による分別回収が広まり,ワンウェイ容器のリサイクルも社会に根付きました。しかしその一方,リサイクルのために多くの費用,特に税金が必要になっています。最初はスチール缶,アルミ缶,(ワンウェイの)ガラス容器,そしてペットボトルと,種類が増えるほど回収に必要な費用も労力も増加しています。
対称的に,前回(第3回11月10日)は,税金を必要とせず,経済行為として循環しているリユースびんについて学びました。かつて飲料をはじめ容器のほとんどがリユースされていました。プラスチック容器をはじめ,まずは増えすぎたワンウェイ容器を減らすことを考えないといけませんが,ワンウェイ容器の大量消費は,一朝一夕に転換できるものではありません。
そこで,今後も市町村が容器包装の回収の主役であり続けないといけないのか,使い捨てプラスチックの削減を考えるにあたって,考えるポイントの1つになります。今回の原田先生の報告には,この点の重要な示唆が含まれています。
◆原田先生の報告概要
□海・川のプラスチック汚染の今
・海のプラスチック汚染
・淀川水系のごみをしらべてみた!
≪ここまでは前回記事。今回の記事はこれ以降≫
□では、どうすれば川や海のごみは減らせるか?
①共感で広がる河川清掃の輪
・オンラインごみマップによるモニタリング
②経済的インセンティブの活用を!
・レジ袋有料化の効果
・海外におけるデポジットの導入事例
・ペットボトルのデポジット制度導入への賛否
■では、どうすれば川や海のごみは減らせるか?
①共感で広がる河川清掃の輪
川と海に流れ着くごみをどうしたら減らしていけるのか,実際に保津川と他の国で行われている取り組みをもとに原田先生にお話しいただきました。
保津川では「ごみマップ」というスマートフォンアプリを作り,どのような種類のごみがどのような場所に,どれだけあるかを可視化しました。その結果、ほとんどのごみが住民の生活から出たごみであること分かりました。そうして分かったごみの分布図を回覧版で配布し,地域住民と情報を共有し,併わせてごみの投棄が多い場所に,監視カメラを設置することで不法投棄や放置ごみは激減しました。地域の方と川とのつながりを可視化することで市民の環境意識が高まり川の環境もよくなっていきました。
また,スマートフォンアプリを活用したことで,当初高齢の方から「アプリなんて使えない」という反応がありました。実際には家庭で息子さんや娘さんに操作を習うなどして,家庭内でのコミュニケーションが深まったなどの話も聞くことができました。
②経済的インセンティブの活用を!
・レジ袋有料化の効果
ただ,道徳心,善意に頼ってポイ捨てをなくしたり,リサイクル率を高めるのは限界もあります。そこで出番なのが経済的インセンティブです。
最初の例として,買い物の持参によるレジ袋の削減活動の効果について紹介します。スーパーマーケットの平和堂が自社店舗での買い物袋持参率を県単位で公表しています。それによると,県単位でレジ袋有料化を実施している富山県,石川県などでは店舗平均で80%台後半に達しているのに対し,2011年当時,滋賀県(店舗数71)では50.9%でした。
琵琶湖を抱え,環境意識が高いとされる滋賀県でも半分に達するのがやっとでした。ところが滋賀県で県単位での有料化が実施された2013年には,富山県,石川県と同様に80%台に跳ね上がりました。
呼びかけや啓発も重要ですが,有料化という経済的なインセンティブは,より大きな効果を発揮する例として紹介します。
・海外におけるデポジットの導入事例
次に,飲料容器のデポジット制度について紹介します。飲料容器のデポジット制度は,購入時に預かり金を取り,空き容器の返却時に預り金を返す制度で,スーパーマーケット等の入口に容器の回収機が設置され,飲料の購入者は,次回来店時に空容器を回収機に投入すると,預り金または預り金相当の金券を受け取ることができます。ドイツやオランダ、アメリカの10の州など海外40以上の国で導入されています。
以下,北欧バルト三国のひとつ,エストニアで行われているデポジット制度について紹介します。
・デポジット制度が企業にもたらすメリット
エストニアは小さな国ですが,ITを国の重要な産業として位置づけています。飲料容器のデポジット制度を採り入れることで,高い精度の自動回収機を開発しました。それらは国内全てのコンビニエンスストアやスーパーマーケット等に設置され,一大産業を作り出した。
国内の回収機とレジのPOSシステムは,デポジット制度運営団体のホストコンピューターと連携し,いつどこで何という商品がどれだけ売れ,どれだけのデポジット金を預かり,いつどこでどれだけ返却したか瞬時にわかるようになっています。このような情報は,飲料メーカーや流通事業者にとって,販売戦略上の重要な資源になっています。
・デポジット制度が社会にもたらすメリット
エストニアではデポジット制度の対象容器はペットボトル,缶,ガラスびんとなっています。デポジット金額は容器の大きさ,素材に関わらず一律10セントです。この制度のおかけでエストニアのペットボトル回収率は90%(2015年)に達しています。ただし,エストニアはEU圏で,国外からきた客が購入した飲料を国外に持ち出すこともあり,実際のエストニアのペットボトル回収率はもっと高いとのことです。
国外に持ち出された飲料も含め,戻ってこない容器分のデポジット金は業界団体にプールされます。その額は,2016年には日本円換算で約3,000万円になりました。これらは環境対策費や自動回収機の設置などに活用されます。また,空き容器を持参した人にも,デポジット金を全額返しているのではなく,半分は福祉団体への寄付に使われています。
・「主催者からの問題提起」とのつながり。社会的費用を低減
前段の「主催者からの問題提起」との関連では,「ワンウェイ容器を減らすといっても,現実大量に使用されている。リサイクルするにしても,大量の空き容器を行政が回収し続けなければならないのか」とつながるわけです。デポジット制度は,行政ではなく販売者である店舗で空き容器を回収します。ということは,空き容器を税金で回収するための社会的費用を大きく低減できる可能性があります。
・ペットボトルのデポジット制度導入の賛否
ただ,このような制度を日本の消費者は違和感を抱かず,受け入れるのでしょうか。大学生たちと観光地で通行人を対象にアンケート調査を実施しました。
結果,一般市民向けアンケートによって,デポジットへの忌避感がほとんどないことがわかりました。合わせて,幾つか示した案の中で「デポジット金額10円」が最も受け入れられ,かつ,うち半分の5円が社会的な事業の寄付に用いられるという案を示すことで,さらに受容性が高まることがわかりました。
以上