「平成の大茶会 洛東の名刹東福寺で楽しむ世界のお茶と環境の話」開催報告

実施概要

日時 : 2017年3月25日(土)13時から15時
場所 : 京都市東山区大本山東福寺 境内
内容 : 講演 お茶と環境にまつわる話(書院にて)
     お茶の飲み比べ,静岡茶,宇治茶,中国茶(屋外テントにて・申込不要)
定員 : 50名(書院内の講演) 実参加94名(スタッフ含まず)
講演 : 登壇者と演題(書院内・登壇順)
浅利美鈴さん 「今なぜ,リーフ茶の一服なの…」京都大学地球環境学堂 准教授
高月 紘さん 「ハイムーン先生による環境と茶の話」京都市ごみ減量推進会議会長
                         京エコロジーセンター館長
爾 英晃さん 「京都で聞く静岡茶の話」大本山東福寺法務執事
伊藤南山さん 「器と食事から見た お茶との相性」清水焼窯元(有)平安陶花園代表取締役

報告:NPO法人地域環境デザイン研究所 ecotone (エコトーン)前田 綾(補筆京都市ごみ減事務局)

講演 お茶と環境にまつわる話(書院にて)

京都市ごみ減量推進会議(以下,ごみ減)は,平成28年度から「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン(以下、リーフ茶キャンペーン)」に取り組んでいます。リーフ茶とは茶葉から淹れるお茶,つまり普通のお茶のことです。
「平成の茶会」は、リーフ茶キャンペーンの一環として取り組んでいるもので,3回目の今回は「平成の大茶会」と銘打ち,東山区の大本山東福寺で開催しました。東福寺の開山は,現在の静岡市の出身で,静岡茶の始祖と伝えられている聖一国師によるもので茶とゆかりの深いお寺です。その東福寺で、様々な角度からお茶と環境に関する話を聞くことができるとあって,申し込み定員の50名を大きく上回る100名近い参加者を得ることができました。地域ごみ減量推進会議の活動メンバーさんも多く参加されましたが、今回初めてごみ減主催の催しに参加された方が多数を占めました。
さて、リーフ茶キャンペーンは、「お茶」といえばペットボトル茶しか知らない人が増えた現在,茶葉から淹れたお茶=リーフ茶を広めるための取組です。ごみ減が,リーフ茶を広める活動をするのには理由があります。緑茶用の茶葉生産量が大きく減少し,ペットボトル緑茶の占める割合が年々拡大しています。ペットボトルごみが多く排出されるようになり、ペットボトルリサイクルは盛んになりましたが、社会的なコストをはじめ多くの問題も生み出しました。
今回の催しの初めに、このようなことも含め開催趣旨をごみ減スタッフから伝えた後,講師の方々の講演が始まりました。

「今なぜ,リーフ茶の普及なの…&ハイムーン先生による環境と茶の話」 高月紘さん,浅利美鈴さん

はじめに「今なぜ,リーフ茶の普及なの…&ハイムーン先生による環境と茶の話」として,京都市ごみ減量推進会議の高月紘会長と京都大学地球環境学堂浅利美鈴准教授によるトークセッションが行われました。
1980年から京都市と協力して取り組んでいる「家庭ごみ調査」は,高月会長が京都大学環境保全センター(現環境科学センター)在職時に始められ,浅利准教授が現在も引き続いて取り組んでいます。この調査では,異なる3地域から、一般家庭のごみ袋を集め,素材や用途に応じて約300種類に分類し実態を知る大切な調査であり,浅利准教授は,「日々どんな暮らしをしているか,暮らしぶりがどう変わってきたか,一目瞭然です。」とおっしゃっていました。他「食品ロス」や「手付かず食品」についても詳しい解説がありました。
まだ食べられる食品も含めて、多くごみが捨てられている現状を変えるため浅利准教授は,京都を古くて新しい「エコ」の発信地とする必要性を説かれ,そのなかで「リーフ茶の普及…」もライフスタイルや流通,価値観の変化により失われつつある大切な「環境マインド」を取り戻す活動としての意義に触れられました。
高月会長は,「ハイムーン」のペンネームで環境漫画を書かれていて,絵を参加者に示し、意見を聞きながら話を進められました。中でも,お茶の飲み方を題材に,生活スタイルの変化によるゆとりの喪失をあらわした漫画(お茶の時間)には,参加者も深くうなずきながら鑑賞していました。また,コーヒーと茶葉の比較や,プラスチックと紙などの比較についても,ハイムーン先生の漫画で分かりやすく解説されるなど,ごみとリーフ茶の関係が示されました。
 

「京都で聞く静岡茶の話」 爾 英晃さん

大本山東福寺法務執事の爾(その)英晃さんからは,「京都で聞く静岡茶の話」として,聖一国師の話をはじめ,東福寺と静岡茶との縁について話を伺うことができました。
東福寺の寺名は,奈良東大寺と興福寺から1字ずつ取って付けたもので,鎌倉時代(13世紀)に創建され,以後京都五山のひとつとして栄えました。一般に禅宗と呼ばれますが,「禅宗」という宗派はなく,臨済宗東福寺派の本山です。
茶と東福寺の関わりについても触れられました。古くから京都は文化の中心地であり,京都から多くの文物が他の地方に伝わりました。しかし,静岡茶の場合は京都から伝わったのではなく,駿河国栃沢(現静岡市葵区)出身で13世紀に中国(当時は宋)に渡り修行を積まれた聖一国師が,帰国時に茶の種を持ち帰り、現在の静岡市葵区に播まいたのが「静岡茶」の始まりと言われています。後に42歳の時東福寺の開山に招かれて初代住職となり,静岡由来の茶が東福寺境内にも植えられるようになったとのことです。
決して「京都発」ばかりではなく,他の地方からも京都に多くの文物が伝わり,京都の暮らしや文化を豊かにした例であるといえます。聖一国師の故郷の静岡市は,今や一大茶産地となり,地元の中学生は修学旅行で東福寺を訪れます。今回の「平成の大茶会」でもその縁で静岡市の農業政策課や茶業組合の協力を得ることができました。
今では東福寺の通天橋は紅葉の名所として有名で,重森三玲が作庭した方丈の庭にも季節を問わず多くの人が訪れるようになりました。紅葉や庭ですでに有名な東福寺ですが、その他にも魅力があることを伝えてくださいました。

「器と食事から見た お茶との相性」 伊藤南山さん

清水焼窯元(有)平安陶花園代表取締役の伊藤南山さんからもお話しをいただきました。伊藤南山さんは,作品が裏千家千玄室大宗匠の御好物となった他,京都迎賓館においても作品が採用されるなどの実績を有してらっしゃいます。
ここでは「器と食事から見た お茶との相性」と題して,器とお茶,食事について解説していただきました。まず美食家であり,陶芸家,料理人でもあった北大路魯山人の「器は料理の着物である」という言葉を紹介されました。料理を引き立たせるのに器の選定がいかに重要か何点かの写真で示されました。さらには,コンビニで買ってきた総菜であっても,器を変えるだけで,季節感や料理の奥行きなど,見た目から受けるおいしさへの期待感が変わることも写真で例示されました。
茶との関係では,自作の湯呑と紙コップを持参され,参加者のうち4人に同じ茶を異なる容器で飲んでもらい,口にあたる器の触感や茶の味への影響などを体験してもらいました。器とおいしさへの期待感,実際の触感など, 誰でもすぐに取り入れることができるヒントをいただきました。
他,千利休から始まる樂茶碗の伝統や,豊臣秀吉による朝鮮出兵によって連れ帰った陶工から始まった磁器の歴史についても解説されました。

まとめ

東福寺といえば,前述のように紅葉や庭で有名で有名ですが,お茶,しかも静岡茶と深い関りがあること,またお寺の近くには清水焼の工房が多くあることなど,京都に長年住む人でもご存知ないことを今回多くの人に知ってもらうことができました。
京都は地元に宇治茶という全国トップブランドの茶産地をひかえていますが,また違った角度から、お茶と京都の関わりを知ることができました。さらには,環境とお茶との関わりについても参加者に知ってもらうことができ,関心を持ってもらうことができたと思います。
この日は方丈前の屋外にテントを設置し,静岡市農業政策課,静岡市葵区の茶業関係者さん,宇治市農林茶業課,京都大学地球環境学堂の学生ボランティアなどの協力を得て,観光客や拝観者に,静岡茶,宇治茶,中国茶(鉄観音茶)お茶のふるまいと試飲をしてもらいました。約200人に試飲していただき,126枚のアンケートを提出してもらいました。

書院参加者から提出を受けたアンケート43枚と合わせた結果は,以下の通りです。(クリックすると拡大します)

また,アンケートと合わせて提出された「リーフ茶愛好宣言」は,リーフ茶キャンペーン サイト内の「リーフ茶愛好宣言(https://kyoto-leaftea.net/declaration/)」に掲示しています※。39人の方が提出してくださいました。
※名前(匿名含む)の後に,(東福寺2017.3.25)と付けているのが,本会場で提出された「リーフ茶愛好宣言」です。

以上

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