「コロナ共生社会のライフスタイルは京都から」プロジェクト保津川原田禎夫さんインタビュー

この回は動画なしです。ごめんなさい。

コロナ禍で増えるプラごみとどうつきあうか

話し手 大阪商業大学公共学部准教授 NPO法人プロジェクト保津川代表理事 原田禎夫さん

日 時:2020730日(木)13時から
場 所:Zoomにて
聞き手:京都市ごみ減量推進会議職員 堀 孝弘

このインタビューのねらい

2020年以降、良し悪し関係なく「コロナ共生社会」を生きなければなりません。
新しいライフスタイルが求められますが、一方、使い捨てプラスチックは増加しています。
脱プラ,減プラが求められる中、新たなごみ減量活動の創造に向けて、この分野に詳しい専門家、社会活動の実践者から、アイデアや提言、見落としていることなど、教示していただきたいと思います。

本日のインタビューのねらい

 原田さんは、海ごみ問題、川ごみ問題のエキスパート。各地での講演や、テレビ出演などで、ご存知の方も多いと思います。
実践にもとづく研究を大切にされています。しかも地域を巻き込んだ(盛り上げた)実践力のすごい人です。地元亀岡市では、レジ袋禁止条例実現の大きな推進力になってらっしゃいます。
さて、2020年に入り、新型コロナウィルスの影響で、外出自粛などもあり、家庭から排出される使い捨てプラスチックが増えています。新たなライフスタイルが求められる今、何を大切にすればいいか、お話を伺いました。

コロナ禍で増えるプラごみ、こんなものまで

聞き手:

新型コロナ感染症によって、使い捨てプラスチックの消費量が増えています。たとえば医療現場や介護現場、あるいは豪雨災害に見舞われた避難所でもそうですね。そういった現場では増えざるをえないと思いますが、日常の暮らしとつながっている問題のように思います。日ごろ河川の清掃をされるなど、ごみにまみれて調べられているお立場として、どのように感じられていますか。

原田さん:

そういう報告は海外でも増えています。正確なデータはまだ上がってきていませんが、コロナ流行後はマスクや手袋が海岸や河原にたくさん落ちている気がしています。それはポイ捨てによるものなのかどうかは推察するしかありませんが、今までの海ごみをめぐる問題と同様と感じています。つまり、「ポイ捨てが悪い」というところに問題が矮小化されて、本質を見失ってしまうのです。
たとえば、道端に落ちている不織布のマスク。あれがプラスチック製だと知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。普通の人は布だと思っているから、土に還ると考えているのか、落としても、まあいいかと思うでしょう。
マスクを一例にお話ししましたが、それが何でできているかをきちんと伝えることが、コロナに関係なく私たちの社会はできていませんでした。不織布のマスクは使い終わった後にどうすればいいか、リサイクルについての情報はどこにも書いていません。燃えるごみとして出すしかない。脱プラスチックが注目される中、「プラマスク」というと売れなくなるかもしれません。私たちの社会の弱さが垣間見えているのではと思いますね。

聞き手:

これがプラスチックだとあまり知られていないものは他にもありますね。たとえば紙おむつとか。

原田さん:

作ってきた会社を責めるわけではありませんが、ナプキンや除菌シートなど、実はプラスチック製だったものはたくさんあります。無料配布の禁止の流れで、レジ袋を作っている会社が今、苦境に立たされています。メーカーにとっては存亡に関わる問題でしょう。本当は、持っている高い技術を新しい社会のために投資するチャンスなのですが。最近ではジップロックを傘にリサイクルするというニュースが流れていました。拡大生産者責任の議論がようやく日本でも始まりそうになっています。これまで、生産者は作ったら後は知らない、ごみは消費者のモラルの問題ということにされていました。それがコロナ禍で我々の弱点としてあぶり出されたのですね。

亀岡市のレジ袋有料化に伴う市内の反応

聞き手:

「ごみ問題」とは「すなわちごみ処理問題」という認識の過ちですね。作った人の責任をどう考えるかが大事なところです。
ところで、先生が活動されている亀岡市で、プラスチック製レジ袋の禁止がもうすぐ始まりますね。どんな反対がありますか?

原田さん:

ネガティブな空気はずっとありますよ。でも大多数、7割方の市民はやったらいいじゃないと言ってくれています。メディアで取り上げてもらえているのも前向きに考えるきっかけになっているようです。

コロナ禍での自粛生活で、2月から3月に家庭からのプラごみが増えました(事業系は減っていた)。環境事業公社から情報発信もしましたが、ごみの量が目に見えて増えて、ごみ収集が追い付かず、夕方になっても取りに来ないのを見て、市民もヤバイと思ったんでしょう。うれしかったのは、飲食店(バー)の方が「テイクアウトを利用しようと言っているけどこれではあかんのちゃう」と言い出してくれたのです(テイクアウト容器に京都府が補助してるんですけどね)。SNSを通じて常連客だった副市長に提案してくれて、2,3日のうちに新しくごみ減らし店の登録制度が始まりました。マイバッグやマイ食器を持参したり、スプーン、お箸などを断ったらポイントがもらえるんです。先行してまちの老舗の中華屋さんが容器とバッグ持参で3割引のメニューを準備されたり、PTA役員の方がマイ容器持参の取り組みを始めてくれてもいました。みんなで飲食店を応援し、お店もお客も努力して、ごみは減らないが増えるのを減らそうという空気が生まれ、短期間で制度ができました。スタンプもラベルシールの切れっ端で手作りなんです。5枚たまったら金券1枚と交換できますが、そこに市役所からのメッセージが書かれています。お客さんがもっとシールをもらうにはどうしたらいいのとお店で質問するなど、若い世代は楽しんで取り組んでくれました。割引になるから得だし、子どもも大人もみんなが楽しみながらできる取り組みになりました。実は来週この制度を国連で発表するんですよ。

聞き手:

ごみを減らすという一つのことで街が盛り上がったんですね。賛成の人はどうすれば反対する人に納得してもらえるかを考えて、進めていく姿が目に浮かびました。
ところで、感染予防の観点から、海外ではレジ袋を禁止していたところが取りやめにした事例があります。マイ容器の持参にも気を遣う必要が出てくるのではと思えるのですが、その点はいかがでしょうか。

原田さん:

過剰反応だと思いますね。布のエコバッグよりもプラスチック包装の方がリスクが高いというデータがあります。日本ではレジ袋廃止に反発する人が一定数いるのですが、マイバッグによって感染のリスクが上がることには科学的根拠がありません。
アメリカのカリフォルニア州がしばらくマイバッグ禁止にしたことはありますが、それは日本とはレジの構造が違うのです。店員さんが袋に詰めてくれる方式なので、お客さんとのやりとりを減らすためにそうなりました。マイバッグを通じての感染リスクのせいではありません。マイボトルを通じて感染リスクが上がることも科学的にありえません。誰が触ったかわからない店頭のペットボトルの方がリスクが高いでしょう。何がリスクになるのかをきちんと説明すればいいんです。一番大事なのは手洗いをきちんとすることであって、感染にマイバッグは関係ありません。

逆風のプラスチック業界は、巻き返しのために強烈なロビー活動を行っています。完全密閉したものでないとだめだというような主張もしています。しかし、それは短期的利益にはなっても、長期的には衰退するでしょうね。その労力は脱プラスチックのための新しい素材や仕組みづくりに注ぐべきです。

レジ袋削減の効果って、わずかなの?

聞き手:

反対する人の中には、レジ袋の割合はプラスチックごみ全体からいうとわずかに過ぎないという人もいます。

原田さん:

その点については、ごくわずかしかないというのは二つの意味で間違いです。レジ袋が全体のプラスチック製品に占める割合は2%程度ですが、自動車の内装部品に使われているプラスチックのようなものまですべてひっくるめての中の2%です。もう一つ、環境省の資料で、レジ袋は海岸ごみの0.数%しかないと出ていますが、それは人口が少なく、海外からのごみの漂着が多い場所での調査結果です。マイクロプラスチックの調査もしておらず、目についたごみだけの調査による数字です。人口の多い、閉鎖水域ではまったく違う状況が出てくるはずです。しかも、レジ袋はすぐぼろぼろになりますし、表面に微生物が付着して海底に沈むから、海岸ではそうそう見つかりません。大阪湾で300万枚沈んでいると言われています。実際、香川県の瀬戸内海での調査ではレジ袋は大きな割合を占めていました。
レジ袋には、生きものの誤飲の問題、含まれている有害物質の問題もあり、削減はやらないといけない課題です。

聞き手:

行動している人に、「それよりこっちの方が大事だ」と文句を言う人は、結局は自分では何もしない人ですね。

原田さん:

仮にレジ袋が全体の0.何%しかなかったとしても、レジ袋のように生活に不可欠でないものすらやめることができないなら、他のものがなぜやめられるのかということを考えた方がいいでしょう。 

漂着ごみは海外発とは限らない

聞き手:

動きたくない人のために前に進まない状況は歯がゆいですね。それでも今年71日には全国一斉レジ袋有料化が実現しました。

次はペットボトルの削減にも取り組みたいですね。漂着ごみは外国から来るというイメージを持っている人が多いようですが、日本から流出して日本に漂着するものも少なくありませんよね。

原田さん:

海流の関係で、どこからどこまでが日本のものが多いなどははっきりとは言えませんが、単純に言うと、西に行くほど中国や韓国由来のものが増えます。東に行くほど日本のものが増えます。特に瀬戸内海や東京湾のような閉鎖水域では99%が日本製です。若狭湾の舞鶴と冠島とでは、比率は変わりますが、日本のものが多くなります。実際に調査するまでは海外のものが多いと思われていました。中国語など見慣れぬ表記のものは目につくから記憶に残るため多く見えてしまうのです。場所によって全然違いますが、距離と人口を考えると圧倒的に日本のものが多くなっています。
ちょっとこの図をご覧ください。対馬からは釜山が見えるぐらいですから、韓国製のものが多いのは当たり前です。でも、九州からも離れているのに日本製のものが13%あります。最近では対馬市役所も、我々は加害者でもあると言うようになってきました。国際連携も必要ですが、対馬市民も減らさねばなりません。稚内ではぼろぼろで出自がわからないものが多いし、瀬戸内海や伊勢湾では調査をしていません。漂着ごみは外国から来たのだと主張する人には適切に反論していく必要があります。

聞き手:

漂着ごみの問題は、自分たちが被害者ではないということですね。

原田さん:

日本だけが対策が遅れているわけではありませんが、事実できていない部分は冷静に見ていく必要があるのです。

PETボトルのリサイクル費用に関心を持とう

聞き手:

拡大生産者責任や事業者責任にいよいよきちんと向き合うべき時期ですね。ペットボトルリサイクルにおける再商品化義務は、もうメーカーから外してもいいという議論もありますがどう思いますか。

原田さん:

経済学の観点から言うと、ちゃんとマーケットが機能していたら、社会のコストは誰が負担していても結果は同じです。企業に責任を負わせたら、価格が上がって消費者がそのコストを最終的に負担するのは当たり前のことなんです。ただ、企業に責任を負わせるのと、消費者に最初から責任を負わせるのとでは、現実の結果が同じにならないのは、様々な製品が何からできているかは作った人が一番よく知っているからです。拡大生産者責任では、企業がいったんコストを負担しますが、それをまた誰かが負担しなければなりません。そこで、誰が最初に負担するようにすれば全体としてのコストが一番小さくて済むかと考える、この観点がこれまで日本社会に欠けていたものです。
企業にはこれまで、消費者はパートナーだという意識がありませんでした。たとえば旭化成がジップロックを傘にするとか、メニコンがコンタクトレンズを回収してリサイクルするとか、各企業が個々に取り組むのはなぜかと言えば、自社製品のことはわかっているからコストが低くて済むからです。ペットボトルがリサイクルの優等生だと言われるのは、どこの会社のものも材質が同じでリサイクルしやすいから。個々の会社や消費者の取り組みではなく社会システムがつくりやすいところです。
どんな仕組みを作るかというのが政治の役割です。もうちょっと議論をしていく必要がありますね。現代日本では圧倒的に企業の持っている情報量が多くなっています。科学者は自然科学と社会科学の両面から、政治へデータを提供してしっかり判断してもらうことが大事でしょう。

聞き手:

「拡大生産者責任は企業いじめ」と言う人がいますが、企業のコストは消費した人に転嫁されていくものです。しかし、その仕組みがうまく機能せず、大量消費社会になってしまいました。

原田さん:

日本は3Rの優先順位を無視してリサイクルを頑張りすぎなんですよね。リデュースをまずやらなければ。それも個人の努力で実現するのではなく、社会として減らすことが課題です。エコな生活をしましょうというのも大事ではありますが、制度づくりがより重要です。レジ袋の無料配布が禁止になると、日本人はまじめだから11円でも持参率が上がります。そうやって仕組みを作れば、ホームセンターで観察してみたら皆さん工夫されていましたよ。亀岡市でレジ袋を禁止したときに、最初の方はかわりに紙袋が準備されていても、今はそれですら出なくなりました。お店の人が言うには、持ち帰り用に袋はもういらなくなるだろうと。贈答用にいくらかは需要が残ると思っていたのに、それも使われなくなったんですって。高級なお店では風呂敷になったようです。どこの家にも記念にもらってしまわれていた風呂敷が眠っています。これまでは趣味で使われていただけだったのが、社会の仕組みを作ることでみんなが有効活用するようになったんです。制度化が大事ですね。

聞き手:

ふろしき研究会さんが、無料配布禁止に向けて、スーパー店舗前で風呂敷の結び方講座をしたら大盛況だったそうです。

ペットボトルも今は牙城のようですが、大部分の商品は水やお茶だから代替品があるものです。誰もが利用しているわけでもなく、問題を合理的に説明すれば大学生でも理解してもらえます。今は小学校でリサイクルは学びますが、その他のことは学びません。リデュースを含めた環境教育が浸透すれば、グランドビジョンが描けて変わっていくでしょうね。ここから変化を加速する必要があります。

魅力的な活動をつくるために 

原田さん:

現状を変えるためにはいろんなことの合わせ技が必要ですね。おしゃれであることや、科学的であることなど。一番大事なのは、取り組む人が、ネガティブな物言いをしないことです。レジ袋有料化に反対の立場の人が「有料化に意味はない」というのは理解できますが、賛成の人でも「これでは不十分だからだめだ」というのは良くないと思います。一つの制度をつくるのに官僚も社内も苦労して説得する必要があるんです。だから環境保全を訴えている人は、ツッコミどころはあってもまずは一歩踏み出したことをお祝いしましょうよ。その姿勢が日本には足りないと思います。反対の人が文句を言うのは放っておけばいいんです。トラブルは起こっていないし、一時的なものは消えていきます。後ろから撃つような真似をせずに、皆でお祝いしないとやる気がなくなるよ。

聞き手:

ごみを減らすために、ある人はストローの削減、ある人はカトラリーの変更、ある人は拡大生産者責任の実行、そしてある人は情報発信を頑張る。お互いが仲間と認め合って進めていけたらいいですね。

原田さん:

「誰ひとり取り残さない」というSDGsが話題ですよね。日本のごみ問題について言えば、皆が守れるルールを作ることが大事です。敵だ味方だと言い合っても仕方ないから、半歩進むためのアイディアを出し合いたいですね。きれいごとばかりではないのはわかります。たとえば、三菱ケミカルが、海で分解するプラスチック製のレジ袋を公表しました。でも、詳しい情報公開はありません。メディアが夢のようなプラスチックと報じていたが、根本は、そこまでしてレジ袋を使わないといけないか、ということです。その技術はもっと他に使ったらいいのではないでしょうか。世界的に需要が減っているレジ袋にそこまでコスト投入するのはどうなのでしょう。もっと新しい価値を社会に提示しないといけない。それは会社だけでなく、矮小化された議論の中にいる日本全体の問題だと思います。そこの社員が、誰も思いつかないアイディアを出して、もっと世界中をあっと驚かせようとしてほしいものですね。

聞き手:

もうゲームチェンジの局面ですね。オンラインショッピングもあるし、お店で買ったものを家に運ぶ方法やその仕組みを作っていくのが、地域の小さい商圏で生き残る道かもしれません。流通業界が新しく考えていってくれたらいいですね。

原田さん:

亀岡市でのテイクアウトごみ削減の盛り上がりの話に戻りますが、お店の人と話していると、普段はコンビニでしか買ったことがなかった人がケーキ屋さんに来てくれたという話が聞かれました。この取り組みによって、まちの人が地域の小さなお店の存在に気づいたんです。コロナクーポンの取り組みを通じてリピーターになってくれたのが大事なことです。コロナ禍で誰もが厳しい状況に追い込まれていますが、その中からニューノーマルの新しい社会をどうつくっていくか。この状況はまだ2,3年は続くでしょう。それなら何をしなければならないかを考えていくことが大事です。

聞き手:

流通は大変革が必要ですね。

原田さん:

流通だけでありません。コロナ禍で旅行業は壊滅的だし、さらに自然災害も加わります。GoToキャンペーンだって、地域という視点がもっと入っていればよかったのにと思います(取材は730日)。県域をまたいで遠くへ行かず、そういえば行ったことがなかった近所の老舗旅館へ行くとかね。そういうところにお金を使うような仕組みにしておけばよかったのに。地域のお店を応援する、地元の人がそこでやっている取り組みとつながることで、新しいごみ減らしのきっかけも生まれていきます。

まずはゴールを明確に

聞き手:日本人は仕組みづくりが苦手ですね。さらに、目的達成にはどうするかを考えないで、現状の問題から対策を積み上げることしかできないから、対処療法を繰り返すうちに、本来の目的から逸れて行ってしまいます。

原田さん:

それには亀岡市のプラごみの議論が参考になるかな。国際交渉をしている友人からのアドバイスをもらったんですが、まずゴールを明確に設定すること。それがないと、だらだら中身のないものになってしまいます。そこで、2030年にプラスチックごみゼロという目標を立てました。今はリサイクル20%ですし、現実的にゼロにするのは難しいのですが、達成のためにはリサイクル率を高めるだけでは無理で、ごみの総量という分母を減らさないといけません。期限を切った数値目標を立て、その筋道を作ることです。できなかったらまた考えればいいんです。「ポイ捨てをやめましょう」みたいなことは目標にしてはだめです。

聞き手:

それには、地域のみんなでビジョンを共有していることが大切ですね。

原田さん:

とはいえ、亀岡市でもビジョンの共有は、全員が諸手を挙げて賛成しているわけでもありません。誰にでもわかる政策として、レジ袋は禁止という明確な目標を持ったこと。国の政策では25%バイオ原料配合のプラスチックや生分解性プラスチック製のレジ袋が例外的に無償配布OKとなっていますが、その方式は亀岡市はとりませんでした。レジ袋の使い捨てを脱却することが目的だからです。石油由来ではないものであっても、無償で配布は禁止です。未来への責任として、使い捨て文化を袋からやめてみませんかというフィロソフィを大事にしてきました。
国のやり方だと、お店の現場では、レジ袋の営業に来る人は「この袋ならただで配れますよ」とやるわけですよ。そこまで考えて制度設計をしないと、正直者が馬鹿を見るようにしてはだめです。なんやわからんけど、役所が言うてはるからあかんねんという制度を作ればいいんです。

聞き手:

そういうことを市に決断させようと思うとけっこう政治的な動きが必要だと思うのですが、議員さんへの働きかけなどを積極的にされたのですか?

原田さん:

亀岡市の場合、保津川を大事にしたい、しなければならないという想いは、議員さんも含めて市民の共通認識なんです。清掃活動には議員さんもたくさん来てくれています。レジ袋禁止に至るエピソードに、「余ったレジ袋は市が買い取ってくれるのか!?」という難癖のような意見もありましたが、協議会に出席している自治会が、「そんなん業者の責任やろ」と言ってくれました。住民の人がそう言ってくれる意識は、十年以上かけて行った清掃活動で培ったものです。まずはみんなで調査から始めました。どんなごみが多いか、よそと比べてどうか。市民は状況をよくわかってくれています。レジ袋とペットボトルばかりだ、じゃあレジ袋禁止は当たり前よね、と自然に行き着きました。
そのまちの文化に根ざしたことから取り組めばいいんです。京都なら、お茶文化を守らねばというように。ハワイ州のプラスチック規制がアメリカで一番厳しいのは、サーファーの声によるものです。ハワイではサーフボードが普通にオフィスに置いてあって、仕事中でもいい波が来たら乗りに行くか、というような文化です。そこに固有の歴史や文化がない地域はありません。たとえば大東市では、川に棲んでいる妖怪の伝説を市の学芸員が掘り起こして伝えました。かつての野崎観音の風景を取り戻そうねというように、何か地域の軸になるもの、みんなが理解しやすい共通言語を見つけましょう。これは豊岡市の生物多様性地域戦略で学んだことなんですが、地域の小学校の校歌を並べると、皆が知っている風景が出てきます。それを守りましょうと呼びかけるとわかりやすいですね。高校生も委員として参画して計画づくりをしました。 

聞き手:

なるほど。
2020年は容器包装リサイクル法制定から30年の節目に当たります。容リ法は事業者責任が小さいと言われ続けてきました。この機会に大変革していきたいものですね。部分合致でいいので、地域を愛する人の力を紡いでいければと思います。
ありがとうございました。

以上

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