コロナ禍で環境団体に起きていることと、Afterコロナに向けた展望の大切さ
話し手 エコネット近畿 正阿彌崇子さん
日 時:2020年12月15日(火)10時から
場 所:大阪市北区、エコネット近畿事務局からZoom取材
聞き手:京都市ごみ減量推進会議職員 堀 孝弘
今回のインタビュー趣旨と話し手の紹介
今回はNPO法人近畿環境市民活動相互支援センター(略称エコネット近畿)※1の正阿彌(しょうあみ)崇子さんにお話を伺いました。
今年は、新型コロナウィルスの影響が社会の隅々まで押し寄せました。もともとの基盤の弱い市民団体、なかでも環境団体への影響は大きく、苦境に立たされている団体も多いと思います。エコネット近畿は、環境団体の中間支援組織として、様々な情報をお持ちです。どのような影響が出ているか教えていただくとともに、Afterコロナの展望などをお尋ねしました。
ヒアリングを実施した団体の概況
正阿彌
環境団体に限らず、市民団体の現状を調査した報告であれば、日本NPOセンターに事務局を置く「新型コロナウィルス」NPO支援組織社会連帯(CIS)が、今年(2020年)6月から8月に全国の市民団体を対象に集めたアンケート報告があります※2が、今回は環境団体を対象に報告します。
私たちのエコネット近畿と同じように、地域の環境団体の中間支援をしているNPO法人北海道市民環境ネットワーク(きたネット)、中部地方のNPO法人地域の未来・志援センターとエコネット近畿は、新型コロナウィルス(COVID19)感染拡大を受け、影響を受けている市民団体と助成団体との懸け橋となろうと環境助成サポートチームをつくりました。その環境助成サポートチームが、今年8月14日から31日にかけて、35団体にヒアリング調査を実施しましたので、その結果から報告します。
聞き手
お願いします。
正阿彌
ヒアリングを実施した団体数は35。法人格はNPO法人が半数強の18団体、任意団体が11団体、公益財団法人が4団体、認定NPO法人と一般社団法人がそれぞれ1団体です。
年間の予算規模は、100万円以下が8団体、100万円から500万円未満が9団体。500万円未満の団体でほぼ半数を占めます。あとは500万円以上1,000万円未満が6団体などです。
その35団体のうち、新型コロナの「影響あり」と答えた団体が29、「影響なし」と答えた団体が6ありました。
環境系市民団体へのコロナの影響
聞き手
「影響がなかった」という団体もあるのですね。それは意外。
正阿彌
行政から委託事業を受けている団体や、野外活動が中心で、活動メンバーが固定されている団体などです。
逆に、自主事業をがんばってきた団体は大きな影響を受けています。助成金をもらっている団体でも、事業が当初の申請通りにできなくて変更計画を出すよう求められても、計画を作り直す時間がないなどの声も返っています。4月から8月に開催予定だったイベントや行事が10月から11月に集中して、他の行事と重なったり、コロナ対策をしなければいけないのはわかっていても、イベント等どのように実施すればいいか情報収集がたいへんだとか。
財政規模の小さな団体が多いのですが、事務所を借りていたり、有給スタッフがいる団体は固定費の捻出に苦心しています。
国際的な活動をしている団体の場合、特に企業からの寄付が集まりにくいという状況があります。外国での活動ができにくいこともありますし、海外の情報が入りにくいこともあります。また、寄付する側にも「今は外国より、国内に」という思いもあるようです。
それでもヒアリング時は8月だったので、今(取材時12月15日)と比べて、まだ楽観的な部分もあったように思います。当時、感染者数が落ち着いてきた状況でもありましたので。
聞き手
実際になんとかイベントや活動を行っている団体で、どのような問題が起きていますか。
正阿彌
資金面では、収入が減ったという声が多いです。講演などの講師依頼が減った。学校からの環境学習の依頼が減った。エコツアーなどの参加者や受注が減った、という声がありました。
その一方、イベントなどをするのに、今までよりも経費がかかるという声もありました。消毒液や体温計等の消耗品備品、会場費を借りる際、マイクも今までより多く必要ですし、オンラインで配信するにしても、設備が必要である、などの声です。
ネット活用のプラス面と生まれている問題
聞き手
たいへんな状況ですが、逆にオンライン配信やネット会議が一気に普及したことで、活動の幅や参加機会が広がったなどの声は出ていませんか。
正阿彌
もちろん、オンライン配信やネット会議が一気に広がり、移動しにくかった子育て世代やハンディをもった人たちに参加機会が広がりました。それにより多様な人たちの参加可能性が高まったと思います。
また、東京でしか開催されないようなイベントやセミナーも多く、これまで人だけでなく、情報の東京集中ということもありましたが、そういった場へのアクセスが容易になり、情報が得やすくなったという面もあります。今まで有料だったセミナーが、ネットで無料開放されることも増えました。
活動面でも、会議や打ち合わせが距離に関係なく開催できるので、遠方の団体との連携の可能性も高くなりました。そういった声がエコネット近畿に関わる団体からも出ています。
聞き手
新型コロナの影響で、「仕方なく」という側面があるにしても、ネットの活用が深化、多様化し、活動面でいいことも起きているわけですね。
正阿彌
ここでも格差は生まれています。ネットを活用できる人たちと、そうでない人たちもいます。オンラインに対する批判派・否定派というのではなく、実際に集まって顔を合わせることの価値をとても大事にする人たちや、多様な人たちを集めるのではなく、現在の活動メンバーから特に広めようとしていない団体もあります。そういった「ネット活用の必要性」を特に感じていない人たちもいます。ですが、そうこうしているうちにも、まわりでは様々な工夫や、新たな機会が生まれています。
聞き手
ある意味チャンスでもあるのに、環境系団体の活動層の高齢化が、そのチャンスを活かせる団体とそうでない団体で、より差を広めているのですね。
持続可能な社会に向けて、仕組みを変えることの大切さ
正阿彌
一方で8月以降、企業の動きは活発になっています。コロナ禍の中でも企業は気候変動対策等、がんばってやらないと銀行から融資も受けることができなくなっています。気候変動対策にメリットがあると感じる企業が増えてきました。コロナ禍で世界的に経済の活動が停滞したら、二酸化炭素の排出量が大きく減りました。良し悪しは別にしてそれほど企業の影響は大きいと感じます。
政府も2050年には二酸化炭素の排出を実質ゼロにするとの方針を打ち出しました。元に戻すのではなく、持続可能な社会に向けて、仕組みを変えることの大切さを感じています。
聞き手
そんな中で、正阿彌さんはどんなことをがんばっていくか、計画はあるのですか。
正阿彌
中部地方の中間支援組織と、それぞれの地域で地域循環経済モデルをつくるべく、現在準備中です。もう少し具体化したらお伝えしますね。
聞き手
楽しみにしています。今日はありがとうございました。
※1 NPO法人エコネット近畿(特定非営利活動法人近畿環境市民活動相互支援センター)
〒530-0041 大阪市北区天神橋2丁目北1-14 サンプラザ南森町401号http://www.econetkinki.org/
※2 新型コロナウィルス感染拡大への対応及び支援に関するNPO緊急アンケート調査(回答数569団体)、「新型コロナウィルス」NPO支援組織社会連帯(CIS)https://drive.google.com/file/d/1UDAkH0iZS23HyeXz07UJ1K34AhCUXpf1/view