「コロナ共生社会のライフスタイルは京都から」気候ネットワーク田浦健朗さん「動画あり」

気候ネットワーク 田浦健朗さんにインタビューしました。

気候変動だけでなく、経済やSDGs、平和についても、うかがいました。

話し手 認定NPO法人 気候ネットワーク 事務局長、
一般社団法人 市民エネルギー京都 理事長 田浦建朗さん
日 時:2020年9月7日(月)14時から
場 所:(Zoomにて取材)
聞き手:京都市ごみ減量推進会議職員 堀 孝弘
(記録:くうのるくらすの創造舎 南村多津恵)

本日のインタビューのねらい:

今日は、気候ネットワークは、どんな団体で、どんな活動をされているか。地球温暖化っていうけれど「気候変動」!「兆候」どころか、はっきりと、その進行や被害が見えてきたこと。災害以外での私たちの暮らしとのつながり(経済や技術など)、などについてお話が聞けたらと思います。

ところで、経歴と著書からもおわかりの通り、田浦さんは、温暖化防止活動のエキスパート。「京都市ごみ減量推進会議が、なぜ気候変動?」と思われるかもしれません。ごみ減が取り組む「ごみ問題」は、「ごみ処理問題」ではなく、消費に深く関わる問題であり、モノの生産や資源採掘、グローバルな輸送などにも関わるものです。「大量消費社会」と言いますが、それは供給側からの需要拡大の働きかけも相当あって起こっている問題です。つまり気候変動の問題と根っこは同じであるため、一緒に考えていく必要があることをあらためて確認したいと思い、企画しました。

聞き手:

田浦健朗さんは、気候ネットワーク事務局長であり、市民エネルギー京都の理事長、他にも様々な団体の理事などを務められ、名古屋で非常勤講師もされています。1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議/気候変動枠組み条約第3回締約国会議)をきっかけに温暖化問題に携わり、1998年から気候ネットワーク事務局長に就任されました。共著に「市民・地域が進める地球温暖化防止」「地域資源を活かす温暖化対策―自立する地域をめざして」「市民・地域共同発電所のつくり方」があります。
さて、今回は以下のことをお伺いしたいと思います。

・気候ネットワークは、どんな団体で、どんな活動をされていますか。
・地球温暖化というより「気候変動」は、はっきりとその進行や被害が見えてくるようになりました。自然災害による被害以外に、気候変動の影響は私たちの暮らしとどう関わりがありますか。
・「日本には、高い環境技術があり、この技術で世界に貢献する」と言う人がいますが、再生可能エネルギーの普及では、世界に遅れをとってしまいました。世界と比べ、現在の日本の状況をどうご覧になりますか。
・世界には、食品ロスや使い捨てプラスチックの削減を、気候変動防止活動の一部として一体的に進めようとしている国もあります。そのような例も教えてください。

田浦さん:

1997年、京都議定書が採択されたCOP3では、「気候フォーラム」という名で気候変動の防止のための市民活動を行っていました。世界の人々の努力によって、議定書ができるという成果は出ましたが、気候変動を止めるにはまだ足りません。国内も温暖化防止には向かっていないし、それに対応する市民活動も十分ではない。そこで、その課題を克服するために1998年4月に立ち上げたのが「気候ネットワーク」で、そこから20年以上活動が続いています。

毎年COP(気候変動枠組み条約締約国会議)に参加し、よりよい国際的な仕組みや約束ができるように働きかけをしています。また、国全体の政策が進むような調査研究や政策提言、キャンペーン活動を行っています。京都に本部があるので、京都を中心とした地域レベルの活動も進めています。自治体の条例や計画を作るお手伝いや、情報発信、地域での温暖化対策が進むような取り組みなど、国際的なことから、国レベル、地域レベルとそれぞれに活動をしています。

また、ネットワーク組織として、様々な国や地域の団体と連携して活動しています。私たちは、NGOでありNPOでもあり、その立場から活動しています。私たちの力には限界がありますが、とはいえ色々な政策に影響を与えています。私たちのつくったモデルが政策に反映される成果も上がっています。今は京都議定書から一歩進んだ「パリ協定」の時代です。いわゆる「脱炭素」、つまり化石燃料を使わないで、私たち人類がより便利で豊かで平和で平等な地域と地球をつくっていきたいと思い、脱炭素で持続可能な地域づくりをめざして活動しています。

危機感の共有

聞き手:

活動は20年を超えましたが、地球環境はよくなったのでしょうか。

田浦さん:

活動を始めた頃は、気候変動問題は将来のことだから、いま私たちが活動するんだと言っていました。しかし、もはや私たちが現役の時代に気候危機がやってきました。問題は将来に先送りできず、延ばせば延ばすほど大変なことになります。20年前よりもっと深刻になっているのが現実です。

聞き手:

その克服のために、日本はすぐれた環境技術を持っていると言われていますが、世界がそれを期待しているでしょうか。

田浦さん:

日本は技術立国であり、企業にもすばらしい取り組みがあるということは今も健在です。ただ、石油ショック直後は取り組みが進みましたが、その後は過去の栄光に縛られて怠けてしまったようです。今では「しぼった雑巾でCO2削減の余地はない」ということはまったくありません。ほとんどの先進国に抜かされ、途上国にも追い付かれました。特に自然エネルギーでは先駆けた技術を持っていたのに生かすことができず、今は追い抜かれてしまったものもたくさんあり、残念です。

聞き手:

良い技術があっても日本にはそれを広める仕組みがなかったのですね。今は技術も先へ抜かれているのですか。

田浦さん:

一概には言えません、リードしている部分もまだあります。今からでも遅くないから、それらが活かせるような政策や経済システムが求められています。

小学校に出向くこどもエコライフチャレンジ

聞き手:

ところで気候ネットワークさんというと、一般の人は「何か難しそうなことをやっている」という印象だと思うので、身近にされている小学校などでの活動を紹介してください。

田浦さん:

私たちは活動の柱に「政策提言」を据えているので、政策の基本的な議論をきちんと理解して提案しないといけません。それは市民感覚とは違うところがあるためわかりにくいというのはご指摘の通りだと思います。でもこれはこれで重要な活動だと思って取り組んでいます。

身近なところだと、子どもたちにちゃんと温暖化のことを理解してもらい、自分の生活とのつながりを家族と一緒に考え実践してもらう「こどもエコライフチャレンジ」のプロジェクトを、京都市、京エコロジーセンター(以下、エコセン)、ボランティアの協力で行っています。2005年から開始して、2010年には160以上の京都市立すべての小学校で実施し続けています。夏休みや冬休みの前に温暖化問題を理解していただき、配ったワークブックで家族と一緒に取り組んでもらいます。提出されたら、一人ひとりに診断書を返していて、休みのあとにはふりかえり学習を行っています。それによって活動を高めてもらったり、継続してもらったりしています。

最初は実験的なところもありましたが、成果が上がってくるようになり、国内の他の地域でもプログラムを実施されるようになりました。マレーシア南部のイスカンダル開発地域では200校以上で取り組まれるなど、京都市との連携で国際的な展開につながっています。マレーシアは途上国ではありますが、経済発展によって温暖化対策や持続可能性への対応が必要になっています。脱炭素のブループリント(青写真)はできていますが、それを実現していくために環境学習が必要だということで協力しています。

聞き手:

15年続けられて、蓄積されたデータもすごいものになっているのでは。

田浦さん:

そうですね。同じことを続けているのではなく、反応を見てプログラムもワークブックも改善をしています。10年前と比べれば、パリ協定ができるなどの社会的変化もありました。それらを反映させながら、子どもたちに伝えています。子どもには難しいとは思いがちですが、最近の子は知識があり、よく考えてくれるので、手応えがあります。

市民が参加できる活動

聞き手:

京都市内の全小学校160校以上となるとかなりの人手が必要ですね。そのボランティアには誰でも参加できますか?

田浦さん:

募集はいつでもしており、意欲さえあれば誰でも参加できます。学校現場にはルールがあるので、それは守っていただかないといけませんが。話す内容は、京都市立全小学校で一定レベル以上を保ち、内容が異なってはいけないし、伝わる話し方や、言ってはいけない表現などのトレーニングも必要です。今は40〜50人が参加しています。

聞き手:

どんな人たちが活動されているのですか?

田浦さん:

平日の午前か午後にボランティアができる人なので、シニアの方やお子さんの手が離れた主婦の方がメインです。就職が決まった学生さんもいます。

聞き手:

シニアの方には生きがいにもなるでしょうね。

田浦さん:

そうですね、子どもと触れ合うことになりますしね。企業などの社会経験のある人が温暖化防止につながる活動に協力してくださることは心強いものがありますね。

裾野の広がり、内容の深化

聞き手:

そうしてボランティアに来られた方が、次に活動の幅を広げていかれるような例はあるのでしょうか。

田浦さん:

そうですね、相乗効果を狙っています。たとえば、エコセンでは毎年ボランティアを育てています。その方々は3年経てば卒業されるので、その活躍の場をこどもエコライフチャレンジで提供したいと思います。京都府地球温暖化防止活動センターで温暖化防止活動推進員として自主的に活動されている方が、ボランティアに来られる場合もあります。また逆パターンで、こどもエコライフチャレンジでボランティアされた方がエコメイトや温暖化防止推進員になられた例もあります。そういう交流もあって、地域のいろいろな活動につながっているのかなと考えています。いろんな人がいるので課題もありますが。

聞き手:

そんな活動ですそ野を広げているのですね。一方、気候ネットワークからは何人もの学識者が生まれていっていますね。専門的分野で活躍する人たちを輩出されていてすごいなあと思います。

田浦さん:

ありがとうございます。事務局長がしっかりしていないから、周りがしっかりするんです(笑)。

世界は深刻に受け止め、日本は小手先の対応

聞き手:

活動が盛んになっていっても、気候変動は大変な状況になっています。日本にいるとわからないこともありますが、皆さんにぜひ知ってほしいことはありますか。

田浦さん:

私が言うまでもないとは思いますが、国内でも大型台風が頻発したり、2020年夏は異常な暑さを体験したりと、そういう傾向が続いています。気候変動が基盤になり、それによって様々な現象が起こっているのは間違いないと思います。気温や海水温の上昇など、観測データから温室効果ガスとの関係も科学的に現れています。温暖化は事実起きていて、人類が起こしている問題であり、解決しないといけません。今年は北極圏の氷が異常な速さで溶けています。15年ぐらいでなくなるという研究結果も出ています。気温が上がることによる悪影響のうち、海面上昇は大きな脅威です。日本は島国で、都市の多くは沿岸部に集中しています。私は漁村の出身ですが、小さなまちや村々が海岸沿いにあります。それ以外の影響も大きく、熱中症などの健康被害、生態系への影響、干ばつと豪雨、農業生産への打撃などが、環境難民やテロを生むなど国際間の平和を脅かすことにつながっています。

私たちは今、人類が経験しなかった危機を迎えています。ヨーロッパでは「気候変動」から「気候危機」の言葉に替わりました。この危機を私たちが止めるには、脱炭素型、つまり化石燃料を使わない社会に転換しなければならないということで、そのためにパリ協定があります。

聞き手:

同志社大学元教授の群嶌孝先生が、「ヨーロッパの国々の脱プラスチックというのは、単に使い捨てをやめましょうという話ではなくて、脱石油文明を築こうとしている、ゲームのルールを変えようとしているんだ。だから、一所懸命リサイクルをしましょうではなく、そもそもそれを使わなくて済む社会にしていこうとしている」とおっしゃっていました。日本では昔のルール、昔のやり方で上手にやっていこうとしているという感じでしょうか。

田浦さん:

そうですね、これまでの日本の対策は小手先に過ぎません。エンドオブパイプ、つまり出口の対策はとても熱心ですが、元栓がダダ漏れです。システムを変えていくことがなかなかできないという問題を抱えています。それは気候変動対策もごみ減量も同じですし、このところのコロナ対策を見ていても同じだなと思います。根本の制度設計をしてやれば、人々がそれほど困らないように対策が進められるようになるのになあと思っています。

SDGsで連携が広まるはずなのに

聞き手:

温暖化もごみ減量も根っこは同じ問題なのに、日本では別のものとして捉えられています。

田浦さん:

分かれているというほどではなくお互いに理解はあって協力できることもあるかと思うのですが、線引きするようなこともあったりするのかな。日本の行政の仕組みが縦割りであるということの弊害もあるのでしょうか。私たちNPOの世界でも分野によって縦割りのところはありますね。それがいいところもあるのですが、分かれてしまうのは残念です。根っこも解決策も目指すところも同じなのですから、統合して根本的な解決に向かえばいいのにと思いますね。

聞き手:

その点、「SDGs」というテーマで他の分野と協力できるのではないでしょうか。

田浦さん:

SDGsはまさにそこを目指しているのではと思います。ただ、その目指すところは誤解されているところもあるように感じています。企業の宣伝に使われたり、誰ひとり取り残さないために弱い政策になるというように。目指すところが同じなのだからうまく統合させて強い政策でつながるべきなのに腰が引けてしまっているような、そこが残念です。これは人間社会だから仕方がないところもあります。負の部分があることを踏まえてどうするかを考えないといけないと思いますね。

聞き手:

SDGsについては、「みんないい子、みんないい人、誰がやっていることもみんないいこと」みたいな不思議な捉えられ方もありますよね。専門的なNPOが横連携することが大事なのではと思います。

田浦さん:

科学技術が専門性を増してきて掘り下げが難しい中で、私たち環境団体も各々が対応する問題の奥深いところで活動しなければいかないので、それぞれの専門的なNPOや研究者の活動がいかに統合されていくか。SDGsもポストコロナも脱炭素社会の実現にも、そこが不可欠じゃないかと思いますね。

温暖化防止とごみ減量の関連

聞き手:

ここで、温暖化防止とごみ減量の関連について見てみたいと思います。

今、食品ロスや食品からのごみが注目を集めています。世界の温室効果ガスの排出量は中国と米国が第1位、2位で突出しています。世界中の「食料のロス・廃棄」による温室効果ガスの排出量は、それに次ぐ第3位相当になるというのです。
食品ロスと食品廃棄物による世界の資源損失をあわせてCO2に換算すると、日本全体のCO2排出量の倍以上になるんです。食品ごみの問題はCO2の問題と密接な関係があるんですね。水、土地、資源、労働力も無駄にしています

FAO(国連世界食糧農業機関)の資料では、世界の食品ロス・廃棄物は推計で約13億トン発生しています。その内訳は、人口がずっと少ない先進国と、途上国が同じぐらいです。先進国では食品廃棄物の約4割が小売りと消費の段階(下流)から発生しています。つまり消費者のライフスタイルや商慣習の問題です。途上国では4割が収穫から加工と保管の段階(上流)での発生です。効率的な収穫技術や冷蔵施設、輸送手段などの社会インフラの未整備の問題です。同じ廃棄でも、物流のより下流で発生するほど、燃料・労働力・資本が無駄になり、CO2排出が大きくなっています。

私たちが身近なところからできることと言えば、コロナ禍でライフスタイルが変わってきたので、無駄な買い物や外出をしないなど、暮らしの見つめ直しのチャンスではないでしょうか。

持続可能な社会は、循環型社会、低炭素社会、自然共生社会が統合されて成り立ちます。今までごみ減と気候ネットワークは活動につながりがありませんでした。これからはぜひ一緒にコラボレーションできればと思います。

田浦さん:

食品ロスの、途上国と先進国の上流と下流の違いは、まさに気候変動問題と関わっていると思いますね。これまで先進国が歴史的にもCO2を出し続けているにも関わらず、被害を受けるのは途上国が先で深刻な被害を受けます。食品という身近で重要なものを見ても、先進国と途上国の違いが表れます。私たちは常に途上国の犠牲の上に便利さを享受できているという南北問題の構図を、私たちは意外に意識できていないのではと思うんですよね。根深い両者の不信感があり、先進国が負うべき責任の問題や不平等な競争は国際交渉の場でも一つの対立点になってきました。幸いパリ協定ではすべての国がCO2削減の義務を負いました。食の視点からも、私たちの下流での廃棄が大きな問題であり、また途上国に迷惑をかけているという構造を理解しないといけません。脱炭素によって、経済も循環型にするのが、言うまでもなく目指すべき方向と思いました。

再生可能エネルギーの普及は、エネルギーの争奪をなくす

聞き手:

温暖化はよく言われていた「南の島がかわいそう」という問題ではなく、もはや我々を直撃するものになりました。食糧の問題で言うと毎年、農業に被害が相当生まれています。私たちはいつまで食べものを捨てているのでしょうか。モーリシャスでの日本の貨物船の座礁事故でも、先進国が途上国に迷惑をかけています。船に積んでいたのは石油でした。私たちの社会が生み出している構造の問題です。北極海の氷がなくなることで、北極海航路ができてアジアとヨーロッパが近くなるとか喜んでいる人もいますが……。

田浦さん:

あそこに眠っている資源がとりやすくなるとビジネスチャンスを狙う人もいますね……。

聞き手:

資源の争奪で、経済と環境のバッティングが起こりそうで悲しいです。

田浦さん:

これまでの戦争の原因は主に石油の取り合いでした。再生エネルギー100%の脱炭素社会でめざすものは、化石資源に依存しないことです。それは奪い合う要因を取り除くことですから、SDGsの平和を構築することと気候変動対策が合致するものです。モーリシャスでの事故も、脱石油ができていれば起こらなかったことでした。脱化石燃料は大変だと多くの人が言い、環境と経済の対立構造と捉える人も経済界には未だにいますが、石油に依存しないことがどれだけ他に良い影響を及ぼすかということをちゃんと理解することが、その方向にきちんと向かうことだと思います。

聞き手:

それしか生き残る道はないですよね。

田浦さん:

そうですね、でも、それしかないと言うより、脱炭素は希望に満ちていると思う方がいいでしょう。今ではそっちの方が経済的にもメリットがあります。化石燃料より再エネの方が安くて環境によく産業や雇用を生み出し地域を発展させることにつながるのですから、ちょっと方針転換する上でいいことずくめです。まあそれは少し言い過ぎかもしれませんが、良い方向に向かうのは間違いないのですから、それをどう実現するかを考えましょう。

活動を始めた頃と、今の変化

聞き手(記録係):

私もCOP3の頃から気候変動の防止に携わってきていますが、最近、気候危機のために行動する若者たちと知り合い、昔の自分を見ているようでうれしい気持ちです。反面、自分はこの20年間の環境活動で実質的な気候変動防止の効果を上げることができず、私はこの子たちに何も遺せていないんだなと悲しい気持ちにもなっています。きっと気候ネットワークの皆さんもそうなんだろうなと思っています。

皆さんの小学校における長年の活動の中で、昔の子どもと今の子どもとの違いとしてどんなことを感じていらっしゃいますか? また、小学校で教えてきた子どもたちの中にはもう大人になった人もいると思います。そんな子たちが気候ネットワークにボランティアに来るようなことも起こっていますか?

田浦さん:

こどもエコライフチャレンジは、立ち上げ時から小学校へ授業に出向いていたものが延々と続いています。今の子どもたちは温暖化問題についての知識は本当によく知っています。教える内容の基本は同じだけれど、すでに本や授業やテレビなどでいろいろな知識を得ているので、それ以上のことをどう学んでもらうかの工夫をしています。ワークシートでいろんなチェックをしてもらう中で、「温暖化問題について家族と話をしましたか」が難しいところです。意外にできないのですが、これをきっかけに家族と話し合うことにつながっています。京都市の市民向けアンケートを見ると、ちょうど小学校5,6年生の家族が温暖化への意識が高く表れていました。こどもエコライフチャレンジの成果じゃないかと考えています。

ボランティアに来る若者の中にも、「あ、この授業受けてたわ」という人もぼちぼちと現れてきていますし、去年は初めて小中校生を対象の全国の作文コンクールを行った中で、中学生の最優秀賞に選ばれた子が京都の出身で、私たちの名札を見て「こどもエコライフチャレンジですか」と尋ねてくれました。

聞き手(記録係):

外国の子どもと比べて日本の子どもは「自分にも何かやれることがある」という意識が低いと聞きますが、あなたにも力があるよということを伝えるために工夫していることがあれば教えてください。

田浦さん:

このプログラムは教育委員会からもアドバイスを受けて進めていますが、今の教育そのものが情報の押しつけよりも自ら考えることを重視しているので、プログラムにはそういう要素を必ず入れるようにしています。地球規模の問題だけど、自分の暮らしとも密接につながっていることを把握してもらうように工夫します。

じゃあどうするんだというところで、子どもだけでなく誰に発信するときも気をつけていることとして、「みんなで○○しましょう」では不十分で、社会のシステムを変えないといけないということを伝えています。自然エネルギー100%の社会に制度を変えないといけないねということは、子どもには少し難しいかもしれませんが、メッセージとして入れるようにしています。一人ひとりが主体的に動く、活動を続けることはすごく重要だと理解してもらいたいと考えているのです。学校によって受け止めが違いますが、熱心なところでは、私たちの2コマ+ワークブックの成果をそれ以降の授業につなげてくれています。それがあればわれわれのプログラムも生きてくるなと思っています。

聞き手:

ありがとうございました。

以上

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