今こそ脱プラ!第5回「今こそ2R!まとめ」報告記事(前半まで)
テーマ 今こそ2R!まとめ(これまでの講座のまとめ)
開催日時 2019年2月3日(日)13時30分から16時30分まで
会 場 MUMOKUTEKI3Fホール(京都市中京区)
参 加 者 32名(講師スタッフを含めて40名)
講 師 浅利美鈴さん(京都大学准教授)
◇◇◇◇◇原田禎夫さん(大阪商業大学准教授)
◇◇◇◇◇金紅実さん(龍谷大学准教授)
◇◇◇◇◇下村委津子さん(NPO法人環境市民副代表理事)
主 催 京都市ごみ減量推進会議
後 援 京都府,京都市,関西広域連合,京アジェンダ21フォーラム
■今回の内容
・今年度講座のここまでの振り返り
・「使い捨てプラスチックを考える」高月紘さん第1回講座で使用予定資料より
・「リゾート地で見たプラスチック汚染」下村委津子さん
・「第2回(10月27日)報告の背景」金紅実さん
≪今回の記事はここまで≫
・これまでの講座内容への質問と返答
・パネルディスカッション
■今年度講座のここまでの振り返り(事務局より)
今年度講座の背景
今年度の「今こそ脱プラ!これからの循環型社会」講座の企画背景として,以下がありました。
「プラスチック生産量の増加」
「海洋ごみの深刻化」
「世界各所の脱プラの動き」
「中国の海外廃プラ禁輸」
これらのうち,海洋ごみについては,「日本は分別・リサイクルが浸透しているので関係ない」,脱プラの動きでは「日本は買い物袋持参運動が盛ん」,中国の廃プラ禁輸には「日本から輸出されている廃プラはきれいで,あくまで資源の輸出」と言う人たちがいます。
昨年度開催した「海ごみ講座」からわかったこと
沿岸への漂着ごみには,国産のプラ製品も多く,川ごみ中のプラごみの多さなど,世界の海洋ごみと日本は深い関係があります。
世界の脱プラの動きは早く,国や地域をあげたレジ袋有料化は,欧州だけでなく,北米,アフリカ,アジアにも広がり,「買い物袋持参運動」どころではありません。
海外廃プラ禁輸は,タイ,マレーシアにも広がっています。日本から海外に輸出されるペットボトルのほとんどは事業系回収で,洗っていないものがほとんどです。
今プラスチックをめぐって世界で起きている様々な問題と,日本は無関係ではないということを,昨年度開催した「海ごみ問題から考える私たちの暮らしとプラスチック」で明らかになりました。
今年度講座のこれまでの振り返り
今年度講座の企画と第1回のふりかえり
今年度は,前年度の成果を受け,「今こそ脱プラ!」を前面に出し,特にペットボトルリサイクルの現状を明らかにしきした。削減に向けた機運づくりを目的に5回連続の市民向け講座を企画しました。
第1回講座は「何が起きているのか 〜中国で,日本国内で,世界で〜」と題し,9月30日開催予定でしたが,台風の接近で中止になりました。以下は,その時各講師が発表予定だった内容です。
高月紘さんからは,プラスチックはどのようなもので,どれだけ消費が伸び,どのような影響が出ているか。世界の使い捨てプラに対する規制や考え方などが報告予定でした。
大阪商業大学の原田貞夫さんからは,プラスチックによる海洋汚染を実際の調査からの報告及び川ごみを通じて,内陸で暮らす我々の暮らしと,海ごみ問題に深い関係があることが報告予定でした。
NHK報道ディレクターの安部康之さんからは,中国の廃プラ輸入禁止で,国内外でどのような変化が起きているのか,取材の成果をもとに報告していただく予定でした。
・第2回のふりかえり
第2回講座は,解決策を考えるその1「減らす」というテーマで,10月27日(土)に開催しました。
龍谷大学の金紅実さんからは,2018年1月の中国の廃プラ禁輸が突然実施された政策ではなく,今世紀に入り数々の品目を輸入禁止,輸入制限項目に指定するなど,徐々に強化されてきたものであることが報告されました。また,中国に廃ペットボトルを最も多く輸出しているのは日本であることも示されました。
ごみ減事務局の堀からは,ごみ減が実施している「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペーン」を紹介しました。海外輸出が常態化したリサイクルの現状や,ペットボトル緑茶の代替手段を魅力的に情報提供することで,市民や大学生に減量意識と行動を生み出せることを報告しました。
水Do!キャンペーン事務局長の瀬口亮子さんからは,清凉飲料の中で特に増加が著しいミネラルウォーターに焦点をあて,水道水の利用を通じてペットボトルを減らす取組を,温暖化防止の観点も含めて,国内外の様々な事例を紹介されました。
第2回報告記事 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1669/
・第3回のふりかえり
第3回は,解決策を考えるその2「繰り返し使う」をテーマに,11月10日(土)に開催しました。この回はリユースびんの回収と洗浄を行う(株)吉川商店(京都市伏見区)を訪ねました。
ワンウェイ容器が増える中,容器包装リサイクル法により,かえってワンウェイ容器のリサイクルを優先する社会になってしまい,リユースびんが厳しい状況になっていることなどが報告されました。その中で意外だったのはリユースびんが不足していること。行政の資源回収に出されることが多く,ガラスびんとしてリユースされるのではなく,割られてカレットとして利用されることが多いとのことでした。
第3回報告記事 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1676/
・第4回のふりかえり(前半)
第4回は「解決策を考えるその3確実に回収する」をテーマに,12月2日(日)に開催しました。まず,事務局堀から,前回の洗びん工場見学の補足として,「リユースびんの基礎知識」を報告しました。
かつて自立した経済行為として,びんのリユースが成り立っていたことや,なぜワンウェイ容器が増えていったのか,その理由として資源価格が人件費と比べて相対的に安くなったこと,流通販売形態の変化などもありますが,ワンウェイ容器の場合,使用後ごみとなり,処理費用を外部化(行政まかせ)できることも要因としてあげられることを紹介しました。1980年代中頃よりリサイクルが盛んになりましたが,ワンウェイ容器の種類,量ともに増える中,リサイクルに追われる社会になっていることも報告しました。そのような状況を受け,「増え続けるワンウェイ容器を今後も行政が回収し続けなければならないのか」という問題提起をしました。
第4回前半報告記事 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1693/
・第4回のふりかえり(後半)
第4回の後半は,大阪商業大学原田禎夫さんに本講座2度目の登壇をしていただきました。
まず9月30日開催予定で中止になった第1回講座で報告予定だった「海・川のプラスチック汚染の今」を,あらためて報告していただきました。海の生き物への深刻な影響や,その要因として人間の生活があること,川ごみを通じて内陸で暮らす者も無関係ではないことなどが報告されました。さらには,各地の川ごみ調査報告で飲料用ペットボトルが上位を占め,消費量の拡大と,ごみとして回収されるボトルの量が比例して増えていることなどが報告されました。
第4回原田さん報告前半 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1727/
原田さんの話の後半は,前段の堀の問題提起「増え続けるワンウェイ容器を今後も行政が回収し続けなければならないのか」に続きます。
原田さんは地元亀岡市で仲間とともに,河川ごみ調査を市民が簡単にできるスマホアプリを開発されました。河川清掃や調査に多くの人の参加を得るとともに,調査結果を多くの人と共有することで,亀岡市内の河川ごみを大きく削減した成果が報告されました。
ただ,意識や道徳心に訴えるだけでは限界があります。そこで有効な手段として「経済的誘導」の実例を紹介されました。最初の例として,買い物袋持参運動をあげ,呼びかけでは持参者の割合が5割だった地域が,地域をあげたレジ袋有料化に踏み切ると9割近くに向上した例を紹介されました。続いて海外の飲料容器のデポジット制度とその効果を紹介されました。特に北欧エストニアでの例をあげ,デポジット制度が空き容器の回収率向上だけでなく,産業振興や社会的弱者の支援などにも効果があること,さらには高い空き容器の回収率が行政を介さずに実現していることなどが報告されました。
このような効果が期待できるデポジット制度ですが,日本の消費者が受容できるのかが問題となります。この点について,学生たちと市民向けに実施した受容性アンケートによって,飲料容器のデポジット制度に対して高い支持が得られたことも報告されました。
第4回原田さん報告後半 https://kyoto-leaftea.net/informations/informations-1731/
■「使い捨てプラスチックを考える」
高月紘さんが第1回講座で使用される予定だった資料を,事務局堀から紹介しました。
・プラスチックの性質
プラスチックの種類は多様で,その特徴・特性も様々です。一般にプラスチックは軽く,水に浮くと思われますが,塩化ビニール,ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)は比重が1以上で細かく破断すると水中に沈みます。漂流ごみや,海岸に打ち上げられる漂着ごみだけでなく,海底ごみも問題になりますがまだ実態はよくわかっていません。
・食物の安全教室(プラスチックとエサの見分け方)
海洋生物がレジ袋やマイクロプラスチックをえさとして誤飲し,体内で消化できず,胃などにたまり命を落とす事例が紹介されています。今では多くの魚の消化器の中からプラスチック片が見つかります。
・マイクロプラスチックによる汚染
プラスチックは海水中に漂う化学物質を吸着する性質もあります。小片を小魚が食べ,それをより大きな生き物が食べ,食物連鎖の上位にいる生物ほど体内に貯まりやすくなります。
・スーパーのフランス革命
フランスでは2015年パリで採択された地球温暖化防止のための新しい枠組みパリ協定の目標を実現するため,レジ袋の使用禁止(有料化ではない)や売れ残り食品の廃棄禁止など,おもいきった政策を打ち出しています。
・ものづくりの国,ごみづくりの国 どうなる,雑プラの流れ
日本では大量の廃プラスチック,古紙,廃家電をアジアの国々(おもに中国)に輸出してきました。いつまでも続くものではなく,2018年1月には中国政府は,海外からの廃プラスチック,古紙,廃家電の輸入を禁止しました。
・新しいバイオプラスチックの登場
海洋プラスチック問題が深刻さを増し,その対策として注目されているのがバイオプラスチックの活用です。今のところ使われている割合はわずかなので,今後どのように原材料を確保するか大きな課題になります。食べられるバイオ資源を燃料やプラスチック生産にまわすのではなく,非可食部を有効に活用することが求められます。
中にはバイオプラ=生分解性プラスチックと認識している人もいます。必ずしもイコールではありません。また,生分解性プラスチックの中には,土中微生物によって分解されるが,海や川では分解されにくいものもあります。
京都市の指定ごみ袋も一部バイオプラスチックを含んでいます。
■「リゾート地で見たプラスチック汚染」
下村委津子さん:認定NPO法人環境市民副代表理事
・海洋プラスチック憲章
2018年6月カナダで開催されたG7サミットにおいて,日本とアメリカは海洋プラスチック憲章に署名しませんでした。しかし,2015年のドイツでのG7サミットの時から話題に上がっていて,その時からEU諸国は準備を進めるなど,すでに世界の多くの国が重要課題と認識していました。3年の時間があったのです。その間に準備をせず,いきなり海洋プラスチック憲章が提案されたかのような捉え方は間違っています。
・ナショナル・ジオグラフィックから
ナショナル・ジオグラフィック,2018年6月号はプラスチック特集でした。その中の写真に幾つか衝撃的なものがありました。
スペインの埋立地でコウノトリがビニール袋にがんじがらめになっている写真。「一つの袋が一匹より多くの動物を殺すこともある。」,死体が腐ってもプラスチックは残り,さらに次の生き物を死に追いやるというもの。他にも,ハイエナが知恵をつけ,埋立地に向かう車が通った後に落ちたプラスチックのごみ袋をあけて中の人間の食べ残しを食べる光景や,沖縄ではヤドカリがプラスチックのキャップを貝がわりにしている写真などが紹介されていました。旅行者はヤドカリの貝を拾い,かわりにプラスチックごみを置いていく,という説明が付いていました。
・アジア・太平洋のリゾート地で見た光景
10年ほど前に,太平洋のパラオ共和国に行きました。戦前日本の信託統治領だったため,様々な日本語が残っています。「選挙」という言葉や日本風の苗字など名前にも名残があります。その中で「ゴミステバ」という日本語も残っています。訪れた時,パラオでは急激な生活様式の変化や生活に入り込んでくる物品の変化にまだ追いついていない状態でした。プラスチックごみへの対処もその一つ。これまでは海にごみを捨てれば,分解されてなくなるものと思われていました。プラスチックをどう扱っていいのか分からずそれ以前と同じ感覚で捨てていました。市民の認識は追いついていませんでした。
今ではパラオはリサイクルセンターもあり、アジアの島嶼国の中では取り組みがすすんでいル方ですが,それでもまだ十分とはいえない状況です。
また最近は気候変動の影響で雨季と乾季のバランスがおかしくなっています。私が訪問した時も雨季に雨が降らなかったために最悪の水不足に陥っていました。朝2時間しか水道から水が出ず,レストランも営業できません。営業してもたくさんの水で洗わなければならない魚料理などはが出すこともできない,ラップを使いお皿を洗わないようにするなどが行われていました。そうするとさらにごみが増えるという悪循環に陥ってしまいます。
場所は変わって,フィリピンのセブ島にあるモアルボアルというサンゴ礁がきれいな海を訪ねたときのことを紹介します。ここには潮流の関係もあり,大量のプラスチックが流れ着いていました。一面のごみ,泳いでいてもプラスチックのごみが体にまとわりつくのです。しかしフィリピンのモアルボアルの人にはどうしようもありません。回収しても処理する場所がないのです。だから放っておくしかないのです。
モアルボアルのホテルでの張り紙を紹介します。7年ほど前にはすでに「プラスチックのストローは使っていません!」という張り紙がありました。2017年の年末頃から,パラオ誓約というものを入国の際にサインすることが必要になりました。パラオを汚さない,傷つけない,というもの。その原文はパラオの小学生の意見が取り入れられ作られました。だからおもしろいと思います。
・世界で進む脱使い捨ての取組
フランスでは2015年に採択されたパリ協定を受け,翌2016年にはスーパーマーケット等のプラスチック製レジ袋の配布が禁止されました。「有料化」ではなく禁止です。ただし,一定以上の厚みのあるものは,繰り返し使えるとの判断で禁止されていません。
使い捨てプラスチックの規制はヨーロッパだけでなく,アフリカ諸国にも広がっています。2017年ケニア政府はレジ袋の使用・製造・輸入を禁止しました。こちらは観光客にも適用されるという厳しいものです。
レジ袋だけでなく,飲料容器についても触れましょう。ハワイのホテルのロビーには給水機がありました。ハワイの山からとれたおいしい水を自身のタンブラーに入れることができます。これでペットボトルの水を毎日購入しなくてすみプラスチックごみを減らすことになります。
日本とスウェーデンのスーパーの飲料売り場の写真を比べてみましょう。雑多に様々なサイズのボトルがある日本と,統一されたリユース可能なびんが多くを占めるスウェーデン。しかもプラスチック製でもリユースタイプの容器が並んでいます。
日本をはじめアジアではどんどんペットボトルを薄くしていきました。簡単につぶせてリサイクルするためです。一方EU諸国は分厚くしてリユースできるようにしています。
スウェーデンの市場の光景を見ていただきましょう。ヨーロッパのほとんどのまちでは中心部の広場に市が立ちます。そこでは野菜・果物はばら売りで売られています。スーパーでも魚は氷の上に置かれていました。ドイツでは公共の広場などではごみを出してはいけないという条例が制定されており、日本ではおなじみの発砲スチロールなどのごみの出ない朝市となっています。
最後に紹介する写真は,長岡京市の市役所にあるマイカップ対応型の飲料自販機です。これは,利用者がマイカップで中身(飲料)を購入することができます。かつては滋賀県庁にもありました。
■「第2回(10月27日)報告の背景」
金紅実さん 龍谷大学政策学部准教授
東アジアの経済発展は雁行型と言われています。日本がまず経済成長し,次に他の国,その次に中国が発展しました。雁行型は本来であればいい意味で使われてきましたが,環境面でいえば逆です。高度経済成長の裏で起きている環境問題・公害にまったく着目されないまま発展モデルが移転されていきました。
中国は1980年代から海外から廃プラスチックを受け入れるようになり,90年代から問題が顕在化しました。2000年代から中国は廃プラの輸入を制限する政策を打ち出します。輸入制限,禁止品目の目録を作成しましたが効果がなく,農地や水資源の汚染が進行しました。2018年1月には生活系,年末には工業由来の廃プラを禁止しました。輸入廃プラのうち,ペットボトルでは日本からの輸入が最も多く,香港からも多く輸入しています。香港は日本から輸入していて,経由しているだけです。
廃プラや廃家電など,ヨーロッパ含め先進国の多くが自国内で処理をせず,途上国に輸出して解体し再資源化しています。今の中国では,廃プラの処理をする会社は違法になりました。そのためリサイクル業者は海外に進出しています。国内で出たごみをいかに自国の中で処理をするか大事なことです。
≪今回の報告はここまで≫
以降,会場からの質問に対する回答とパネルディスカッションを実施した(略)。