ECOだ

川からペットボトルを減らすには・・・

全国川ごみネットワーク 事務局伊藤浩子

拾うだけでは無くならない川のペットボトル

埼玉県から東京の北東部を通って東京湾へと流れる荒川では,荒川クリーンエイドとして年間100回(地点)以上のごみ拾いが毎年行われています。しかし,そこで拾われたごみの総量はなかなか減りません。なかでも河口近くの水際には驚くべき数々のペットボトルが漂着している場所もありました。
川のごみは,利用者のポイ捨てによるものもありますが,その上流や支流,またそこに注ぐ用排水路など町なかから流れ着いているものも多いと考えられています。ボランティアによって毎年毎年拾っても,また町なかの生活ごみが漂着してしまうという悲しい状況です。


(写真1)荒川河口付近  (H28年2月撮影)
提供:NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム

 

荒川で拾ったペットボトルの3割以上はお茶

荒川クリーンエイドでは,2016年に最も数が多く拾われたごみはペットボトルで(グラフ1),2009年以降最多となっています。2016年は,数えて拾われたものだけでも4万個を超えています。全国川ごみネットワークが呼びかけた全国水辺のごみ調査(水辺のごみ見っけ!)では,2016年の半年の調査期間内に水辺で調査・回収されたペットボトルは5万個を超えています!

(グラフ1)

この荒川で最も多く拾われているペットボトルをさらに種類別に調査をすると,その中で最も多いのがお茶でした。38%はお茶のペットボトル(※1)という結果です(グラフ2)。
そして,この回収したペットボトルを種類別にみてみると,清涼飲料PETボトル生産比率とほぼ一致するという結果でした。グランドが多い河川敷ではスポーツ飲料が多いという訳ではなく,町の中のごみがそのまま川ごみとして反映しているようです。
さらに,荒川で拾われたペットボトルの半数以上は,水かお茶です。これなら,ペットボトルを使わずとも水筒を利用すれば,環境にもお財布にもやさしいはずですね。

 

リサイクル率86.9%でも

最近のペットボトルリサイクル率は86.9%(※2)という,高い比率となっています。でも,これで良いでしょうか?残りの13.1%はリサイクルされていないということ。年間約205億本のPETボトル出荷本数(※3)の中で,リサイクルとして回収されていないのが約27億本です。この中のさらに1割弱が自然界に出たとするだけでも毎年約2億本が自然界に放出され影響を及ぼしてしまうことになります。これでは拾うだけでは対処できません。

(グラフ2)

川ごみで身近な環境学習

最近では,海に流出する大量のプラスチックや,海を漂うマイクロプラスチックの問題がニュースなどで取り上げられるようになりました。でも,「海」では,どこか他人事に感じるのではないでしょうか?川で拾えるうちにごみを拾うことは海ごみを減らすためにも重要です。海のごみは川のごみと密接に関わり,川のごみは町の中のごみ・私たちの生活から出るごみと密接に関わっています!
いつまでも拾うだけでは無くならない川や海のごみは,もはや拾うだけではなく,根本的な対策をすすめないとなりません。
そのためには,私たち生活者が声を挙げ,プラスチックのごみを出さないような生活を実践し,プラスチックごみが減るような仕組みの推進を求め,後押ししていかなければなりません。仕組みを変えていくのは私たちが簡単にできることではないかもしれません。でも私たち生活者の後押し無しでは仕組みは変えられません!

自分たちが住む町には身近に川や水路があることでしょう。そんな身近な川でごみや環境のことにも目を向けることができます。水辺でペットボトル等のごみが落ちているのを見かけたら,何でここにあるのだろう?このままではどうなってしまうのだろう?とちょっと考えてみてはいかがでしょう。そんな一歩から,環境のことを考え,環境に良いことを実践できる仲間が増えます。川のごみが気づかせてくれます。

さあ,マイボトルを持って身近な水辺に出かけてみましょう!川・地域・そして地球の環境を良くする行動の一歩です。
(2017年9月6日公開)

※1 荒川クリーンエイド2010~2013年調査結果より(NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム提供)
※2,3 PETボトルリサイクル年次報告書2016より(ペットボトルリサイクル推進協議会2015年度データ)

筆者プロフィール

全国川ごみネットワーク 事務局。NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム 元事務局長 (公財)日本環境協会 こどもエコクラブ推進委員 環境省登録 環境カウンセラー(市民部門)

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