ECOだ

エコなペットボトル収集はどっち?

 環境カウンセラー,森林インストラクター栗岡理子

市町村収集と事業系回収,どちらに出すのがエコ?

使用後のペットボトルを皆さんはどちらに出しますか?市町村収集?それともスーパーへ持参?「ペットボトルを使わない派」の私でも,醤油やみりんのペットボトル,または子どもたちの置いていった飲料用小型ボトル・・・など,月に1~2本は排出の機会がやってきます。住んでいるまちの市町村収集に出すのがエコか,スーパーの回収ボックスに入れる方がエコか,悩ましいところです。
スーパーやコンビニ,駅などで回収される事業系回収分のペットボトルの大半は海外へ売却されているので,近所のスーパーへ持参するとおそらく海外へ流れます。市町村収集の場合,全国的に見た場合,海外への流出分は1,872トン(2015年度)1)とのことなので廃ペットボトル輸出量全体の1%に満たない量です。ですから,市町村収集に出したペットボトルのほとんどは国内循環しています。しかし,国内循環が望ましいと思ってはいるものの,ペットボトル飲料のメーカーおよび販売者が責任をもって回収・リサイクルすべきだと考える私にとっては,ペットボトルを市町村収集に出すことには、多くの問題を感じます。

 ※京都市が収集した空ペットボトルは全量国内でリサイクルされています。

市町村収集ではどの方式がエコ?

市町村のごみ処理事業経費は増加傾向にあります2)。その理由の1つは,市町村のペットボトル収集がより便利になってきていることがあげられます。近年,拠点回収方式からステーション収集(複数世帯が同じごみ置き場を利用して自治体が定期的に集める方式)へ,ステーション収集から戸別収集方式(各戸収集)へ変更する自治体が増えています。またステーション収集の場合,収集回数がより頻回になっています。確かに,収集場所が身近になればなるほど,そして頻回になればなるほど,ペットボトル収集量が増加することは多くの先行研究からも明らかです(例えば,吉澤ら20073,栗岡20164))。また,収集量が増加すればするほど可燃ごみなどへのペットボトル混入量は減少する傾向にあることも確認されています(図1)4)

図1

しかし,住民にとっての便利さは,収集事業経費がかさむことにつながります5。収集場所が増えることにより,収集により多くのエネルギーが費やされるからです。収集頻度が増すことも同様です。自治体は収集経費の増加と住民にとっての利便性を天秤にかけることになります。ペットボトルのヘビーユーザーにとっては収集場所が身近になり,収集頻度が高まることは利便性の向上と映るでしょう。しかし,あまり使わない住民にとっては,収集により多くの費用を投じるのは,歓迎できることではありません。どの収集方式を選ぶにせよ,回収に税金を使っている限り,誰もが満足できる選択をするのは難しいことです。

やはり「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそう」

もし,多くの住民が急須でお茶を淹れ,外出時にはそれをマイボトルに入れて携行するようになれば,ペットボトル使用量が減少し,自治体の収集・選別・保管費用も減少します。その上,資源の節約や温暖化防止など地球にはもちろん,本人のお財布にも優しい!さらに美味しい!!と,まさに良いことづくしです。
ペットボトルの9割以上が飲料用で,このうち約8割が700mL以下の小型ペットボトルです6)。マイボトルにリーフ茶を詰めることで,小型ボトルの消費を減らしつつ,外出時も心豊かにティータイムを楽しみたいと思います。
(2017年5月27日公開)

図2 「奈良市内で回収されたペットボトル(筆者撮影)」

1) 環境省(2017)『市町村における使用済みペットボトルリサイクルに係る実態調査結果のポイント(H29.4)』http://www.jcpra.or.jp/Portals/0/kaigi/pet/20170411/do03.pdf
2) 環境省(2017)『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成27年度)について』http://www.env.go.jp/press/files/jp/105331.pdf
3) 吉澤佐江子・松井康弘・田中勝(2007)「地域特性および施策効果を考慮した資源ごみの排出原単位推定に関する研究」『都市清掃』
4) 栗岡理子(2016)「ペットボトル収集方式毎の焼却等を含む自治体処理量の推計」『環境情報科学』45(3), pp.65-72.
5) 住民の強い要望により拠点回収から週1回のステーション収集に変更したある市では,収集量は約9倍増加したが,収集事業経費は約12倍になった。
6) (株)日本経済綜合研究センター(2014)『包装資材シェア事典2014年版』

筆者プロフィール

栗岡理子(くりおかりこ) 環境カウンセラー,森林インストラクター
著書
単著『散乱ペットボトルのツケは誰が払うのか』(合同出版)2012年
共著『紙と古紙』(古紙問題市民行動ネットワーク)2003年
共著『だれでもできるデポジット』(合同出版)2000年

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