未来だ

容器の2Rをすすめよう

びんリユ-ス推進全国協議会 副代表 (株)吉川商店 代表取締役吉川康彦

洗って何度も使えるリユースびん

容器には洗うだけで繰り返し再使用されるリユ-スびんというものがあるのをご存知でしょうか。また,そのリユ-スびんを専門に扱うびん商という仕事があることをご存知でしょうか。私はリユ-スびんの一つである一升瓶を主に回収し洗浄する工場を京都市伏見区で営んでいるのですが,このような容器が世の中にあることをご存じのない方も多くなってきたように思います。
日本酒や焼酎が人気の飲み物となった今日,居酒屋さんの棚には一升瓶がズラリと並んでいます。これらの一升瓶は空になった後,酒販店や酒問屋で回収され,われわれびん商の手に渡り,洗浄工程を経て酒蔵へ届けられ,ふたたび容器として活用されます。
お酒は江戸時代には樽で出荷され,その樽も再使用されていましたが,樽から硝子びんに移行した明治時代から硝子びん再使用の仕組みは維持され,現在では年間約1億本,一升瓶全体の約7割に再使用びんが使われています。

リユースびんが大きく減少した国内市場

しかし,リユ-スびんは一升瓶やビ-ル瓶,牛乳瓶,飲食店用の清涼飲料などに用途は限られ,全体で30億本程度まで減少してしまいました。現在,国内で生産される飲料食品容器の総数は700億本以上と推計されているのですが,そのうちリユ-スびんの占める割合は4%ほどしかなく,国内の容器は一回限りの消費で捨てられてしまうワンウェイ容器が圧倒的に多い状況です。
昭和55年頃,駄菓子屋ではリユース容器のジュースが売っていましたし,ビールも缶ではなく瓶が主流でした。しかし,今日のスーパーやコンビニの棚に並ぶのは,缶やペットボトルなどのワンウェイ容器の商品ばかりになり,排出される容器ごみの量はこの数十年で大きく増加しました。当然のことながら容器の消費による環境負荷は大きくなりました。

リユ-スびんの将来の可能性(弊社の取組から)

リユース容器は洗うだけで何回も再使用されるため,環境負荷はワンウェイ容器と比べ小さいという利点があります。仮に京都市内で回収した一升瓶を弊社で洗浄加工した後,伏見区の酒蔵にお届けした場合,新しい一升瓶を使用するのと比較し,二酸化炭素の排出量は1/10程度で済みます。
さらに弊社では2013年より倉庫の屋根を利用して840枚のモジュ-ルを設置し太陽光発電による電力を電力会社に売電する事業を始め,洗びん工場の稼働に費やす電力の19%相当を発電しています。(この発電により得られた電力は現在FITにより全量売電しており,現状では工場の稼働には使用していません。)
これを元に試算を行うと,仮に工場や倉庫の敷地に建ぺい率を考慮し,屋根全面に太陽光発電モジュ-ルを敷き詰め,売電せずに自家消費した場合,年間想定電力消費量の72%にあたる約41万kwhをカバ-できることが分かりました。蓄電設備や天候と季節変動による発電量の変化など課題はありますが,節電タイプの機器の導入やモータ-を極力使わない設備への転換により80%削減は可能だと考えています。
また,太陽光熱をびん洗浄に利用は出来ないものか,などなど。かなりの投資資金が必要であり夢のような話かもしれませせんが,もしこのようなエネルギー転換が実現できれば,リユ-スびんは化石燃料由来のエネルギーにほとんど頼らない究極のエコ容器となるわけです。

望まれるリユ-スびんを活用した社会

2015年12月に地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が採択され,産業革命前から気温上昇を2度以下に抑え,さらに1.5度以内に努力し,今世紀後半には温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするという方向が打ち出されました。
このシナリオを実現するために,世界全体で2050年までに4~7割もの温室効果ガスの排出削減をしなければならず,大量排出国である日本は,大幅な削減の必要に迫られることが予想されています。
ひとりひとりがライフスタイルを見直し,排出削減の取り組みを推進し,化石燃料に頼らない社会の構築に向け,早急に移行を進めなければなりません。そのため,まずは缶容器やペットボトルなどのワンウェイ容器の削減を進めつつ,リユースできるものは,可能な限りリユースすることが大事です。
リユ-スびんは将来の低炭素社会の確立のために活用すべき容器であると思っています。この「リーフ茶の普及で,ペットボトルを減らそうキャンペ-ン」が国内の容器がどうあるべきか再考する機会となり,将来の容器2Rの進展に寄与することを期待しています。(2017年3月4日公開)

※FIT 固定価格買取制度(Feed-in Tarif)の略。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及を図るため,個人や企業などが再生可能エネルギーで発電した電気を,電力会社に一定期間,固定価格で買い取ることを義務づけた制度。日本では2012年7月から始まった。

以上

びんリユ-ス推進全国協議会 http://www.bin-reuse.jp/

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